やりたいことがあるなら今やろう!「世界一周、親子旅」#21

ケニアで出会ったマサイ族のホストファミリー

 こんにちは! 家族4人で世界一周旅を続けているMimiです。今回はケニアの旅で一番の思い出となった、マサイ族のお宅でのホームステイについてお伝えします。

 タンザニアを離れて、世界旅19カ国目となるケニアに入国。ケニアでは、キリマンジャロと野生動物が楽しめるアンボセリ国立公園やアフリカ最大規模のキベラスラムなどを訪れて、たくさんの思い出を作りましたが、なかでも一番の思い出となったのは、マサイ族のお宅でホームステイをしたことです。  

 Workawayというホストと旅人を繋ぐマッチングサイトを使い(第一話参照)、これまで5カ国7カ所のホストファミリーにお世話になりました。アフリカでも現地の暮らしを体験したいと思い、ホスト先を探していたところ、マサイ族のファミリーを見つけ、2週間ホームステイさせていただきました。

強烈な異文化体験とは、まさにこのこと!

 アフリカの民族と言えば、たいてい誰もがマサイ族を思い浮かべるのではないでしょうか? 世界的にも知られるマサイ族ですが、実際にはケニアの全人口の2%ほどの少数民族です。

 ケニアの首都ナイロビから1時間ほど離れたサバンナの中に、ホストファミリーのお宅はありました。私たちをホストしてくださるファミリーは、3人の子どもがいる5人家族。マサイ族は、伝統的な土壁の住居や裸で赤い布をまとっているイメージが強いですが、一部のマサイ族は現代の暮らしに変わりつつあり、私たちのホストファミリーも普段の生活では洋服を着用し、土壁ではなくトタンで作られた住居に家畜と共に暮らしていました。

マサイ族 21_1

 到着2日目、強烈な異文化体験となる出来事がありました。私たちを歓迎するために、なんと羊を目の前で屠殺して、調理をしてくれたのです。マサイ族は来客や特別な日には、羊やヤギを屠殺しておもてなしする文化があり、近隣住民や村の長老も集まってくれました。そこで、マサイ族の主食は「お肉と動物の生き血と牛乳」だと聞かされ、衝撃を受けたのも束の間、窒息して動かなくなった羊の皮を剥ぎ、頸動脈にナイフを入れ、したたる血液をコップに注ぎ始めたのです。大人も子どもも、それを「甘い」と言って美味しそうに飲む姿に仰天! 「これがマサイ族か」と驚いたのは言うまでもありません。

 その後は慣れた手つきで羊を捌き、肉や内臓だけでなく、なんと頭部もスープにし、毛皮以外はすべて無駄なく皆でいただきました。命の犠牲の上に私たちの食事が成り立っていることを改めて感じました。息子たちも、残さず食べることの大切さをマサイ族の姿から学んだようです。

マサイ族の厳しい現実

 一緒に生活する中で、マサイ族の厳しい現実も見聞きしました。ホストファミリーが暮らすマサイランドは、3〜4年も干ばつが続いており、牛の食べる草が育たないため、飢餓寸前の痩せ細った牛たちを何度も見かけました。マサイ族にとって、牛はお金と同等であり、貴重な財産です。ホストファミリーは他の事業で生計を立てていましたが、牛の売買で生計を立てている方々がほとんどのため、収入が減り、深刻な貧困と飢餓に陥っていることを知りました。実際、滞在中にホストや近隣の方からお金を要求されたり、食べ物がないかと言われて支援したこともありました。

マサイ族 21_3

 元々マサイ族は、放牧しながら、雨と草を求めて移動する遊牧民。昔は自由に他の民族とも行き交いながら、自然の中で動物たちと共に生活していました。しかしヨーロッパ諸国の植民地支配により、半ば強引に国境が引かれ、自由に大地を行き来できなくなったのです。その後も定住化政策が進み、さらに移動の自由が奪われていったそうです。  自由に移動ができれば、それぞれの民族が今も豊かに自然の中で暮らしていたのだろうと思うと、本当にやるせない気持ちになりました。同時に、こういった伝統的でシンプルな暮らしから、現代人が学べることがたくさんあるのではとも感じました。昔と比べればマサイ族の生活も変わってきていますが、伝統的な暮らしを見てみると、その土地で採れる資源で家を建て、自然や食べ物に感謝し、必要以上に消費しない、地球を汚さない生活をしています。家族や近隣住民が常にお互いの家を行き来していて、コミュニティーの繋がりの深さも感じました。

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ミミさんがホストファミリーに振るまった「肉じゃが」を囲んで

 マサイ族だけに限らず、アフリカ大陸には3,000以上の民族がいます。アフリカを旅する中で、他の民族の暮らしも見てきましたが、電気も水道もない環境で自然と共に暮らしている人たちが今でも大勢います。もちろん貧困でその生活を選ばざるを得ない人もいると思いますが。アフリカに今も多様な野生動物と豊かな自然が残っているのは、自然環境を大切に生きてきた民族の存在があるからだと感じました。  こういった伝統的な暮らしや文化を守っていってほしい。そして、一時的な支援ではなく、彼らの伝統や文化を尊重し、豊かに暮らすことのできる継続的な自立支援が必要だと感じました。貧困問題は根深く、わずか2週間の滞在で、何か彼らのためにできたかと言うと現状を知ることしかできなかったのは不甲斐ない思いですが、こうして私が記事を書くことで、多くの人が現状を知る機会となったり、マサイ族を訪れるきっかけとなったら嬉しいです。

ケニアでのホームステイを振り返って

 わずか2週間の滞在でしたが、ケニアの主食であるウガリやチャパティ作りを教わったり、近隣のマサイ族のお宅や子どもたちが通う学校を訪問させていただいたり、街のマサイマーケットや教会に連れて行ってもらったりと、マサイ族の暮らしを存分に体験させてもらいました。私たちと同時期にオランダ、イギリス、スペインからのボランティアが来ていて、ひとつ屋根の下に黒人、白人、黄色人種がいるという世界の縮図のような貴重な時間を過ごすことができたのも振り返るとすごい体験でした。


 特に長男は、ホストファミリーの長男スタンレー君と波長が合ったようで、仲良くなり、最後はお互い涙が止まらず、親の私ももらい泣きするほど二人は別れを惜しんでいました。旅には出会いもあれば、別れも付きものです。時に子どもにとって残酷だと感じることもありますが、流した涙は心が通じ合い、素晴らしい時間を過ごせたという何よりの証拠。人種や言語の壁を越えてマサイ族の友達ができたこと、家族の一員として温かく迎えてもらって過ごした経験は、長男を一回りも二回りも人間的に成長させ、一生忘れられない出来事として彼の心に刻まれたようです。

 私たちの旅はまだまだ続きます。次回もお楽しみに。

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