シネマ・コンシェルジュの柴田あずさです
皆さま、はじめまして。シネマ・コンシェルジュの柴田あずさです。
アラフォー以上の世代の女性たちに是非観ていただきたい映画や、共感できるような映画を毎回選りすぐって紹介していきたいと思っています。
さて今宵、記念すべき第一回目の作品をご紹介する前に、私と映画との歴史をちょっとだけお話させてくださいませ。
今では映画関連のお仕事をさせていただいている私ですが、振り返ってみると、どうやら映画好きのDNAは祖父から受け継いだようです。今と比べると、まだまだ劇場で公開される洋画が珍しかった頃、祖父は母を連れて毎週末、映画館に行っていたそう。日本初公開が1952年だった「風と共に去りぬ」に主演していたヴィヴィアン・リーが、いかに美しい女性かを延々と語っていた祖父。そんな祖父の話を聞くたびに、祖母はピキピキと緊張感を漂わせていた思い出が……(笑)。
なので、私の映画への入口はハリウッド系作品でした。
自分から父に「映画館で観たいから連れて行って欲しい」とお願いした最初の作品はディズニー・アニメの「101匹わんちゃん」。でも、始まって10分ほどで「つまらない! 帰りましょう!」と席を立ったクルエラ・デ・ビルのような幼稚園児でした(笑)。当時からきついコメントをしてしまう性質があったのかも(反省)。父の転勤に伴って中学生のときにアメリカに移り、そこでハマった映画作品の数々はハリウッド系だったので、私が観てきた作品はそちら寄りだと思います。
そんなバックグラウンドを持つ私ですが ご案内する映画を「あら? 今夜、観てみようかしら?」と思っていただけたら何よりでございます。毎回一本ずつご紹介して行きたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
Vol.1 「エターナル・サンシャイン」あらすじ
さて 記念すべき1本目にご紹介する作品は、私の独断と偏見で、私が最も好きな作品を選ばせていただきました。
ミシェル・ゴンドリー監督、チャーリー・カウフマン脚本によるNYが舞台の「エターナル・サンシャイン」(2004)。ジム・キャリーとケイト・ウィンスレット共演のロマンティックSFドラマです。
まずは、あらすじをご紹介しましょう。
時は2004年のバレンタインデーを控えたとある日。
ジョエルは奇妙な手紙を受け取ります。その内容は……
クレメンタインはジョエルの記憶を全て消しました。
ーLacuna社ー
今後は彼女の過去について、くれぐれも触れないようお願いいたします。
ジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)は、最近喧嘩別れをしてしまった恋人たち。
ジョエルは、仲直りをしようと思っていた矢先に、彼女が2人に関する記憶を全て抹消したことにショックを受けてしまいます。そして彼自身もその辛さから逃れるために、クレメンタインとの記憶を消そうと、「記憶除去」を専門とするLacuna社を訪れますが……
なぜ、この映画が素敵なのでしょう?
私が、このストーリーに大いに惹かれた理由は3つあります。
まずは映画におけるメッセージ「過去の恋愛の記憶と、どのように向き合うか?」ということ。
2つ目は、目まぐるしすぎると感じるくらい、巧妙に計算されている「ユニークなストーリー展開」。
そして3つ目は、ミュージック・ビデオも手掛けるミシェル・ゴンドリーが描く「脳内ワールド映像の楽しさ」です。
SFドラマなのにも関わらず、思わずリアルに自分自身にも問いかけてしまう「過去の恋愛の記憶」というテーマ。
もし記憶を消せるこの装置を現代の私たちが使えるとしたら?
さすがにこの年齢になると、いくつかの恋愛体験の中にはビターなものや、思い出したくない人や記憶などが、いくつかはあるのではないでしょうか? 震えが止まらないぐらい泣いてしまったお別れとか……。
私もいろいろと思い出してしまいます……。
私も映画のクレメンタインのように衝動的なところもあるので、もっと若かったら、ここLacuna社に行っていたかもなぁ?
でも、今の私はその誘惑に「Noと言えるアラフィフ」です。(ギリギリ、アラフィフですねー) この映画の2人のように大声を出し合って喧嘩した日々だけではなく、本来なら2人だけしか知ることが出来ない、とてつもなくプレシャスで幸福な日々もあったことは確かですもの。それも消えてしまったら、きっと後悔してしまう。
お分かりの通り、この映画の原題は劇中でメアリー(キルスティン・ダンスト)が暗唱したアレキサンダー・ポープの詩「Eternal Sunshine of the Spotless Mind」にちなんだもの。
記憶除去装置をつけても、記憶のもっと深いところにあるソウル、いや「心」の部分まで消すことは出来ない。つまり幸せな記憶は、この映画のタイトルのように「ずっと輝き続けてくれること」を教えてくれるのです。ですから、思い出したくない過去の恋愛がある方に、この映画を観ていただきたいと思います。
現実の世界におけるここ数年間の脳の研究では、人間の脳というのは
「嫌な記憶」というのを消して「楽しかった記憶」だけを残すパワーを持っている、
ということがわかったそうです! すごい!
この分野に関しては、MITの利根川進教授の研究が有名ですよね。ご参考までに。
そういう観点でも、この映画は今でも注目に値する作品です。
脳内ワールドの美しさ
この映画の魅力的なポイント2つ目は「ストーリーの展開」。
複雑だけど、まぁ細かくよく出来ています。記憶を消す前やその後のこと、さらにジョエルの子供時代まで飛んでいくため、時間軸がバラバラになっていて、ゴチャマゼ感や、目まぐるしさはあるかも知れません。
が、逆にその辺りを気をつけてみると面白さが増すのです。
ヒントはクレメンタインの髪の色ですね。既に観た方も、そこを意識してもう一度ご覧になってみてはいかがでしょう?
魅力3つ目は、ミシェル・ゴンドリーのファンタジックで、クリエイティブな「脳内ワールド映像の楽しさ」。
ジョエルは、やはりクレメンタインとの記憶を消したくない。彼女を愛していた日々も思い出し、彼の脳内に入り込んだ記憶除去装置の手から逃げているのですが、その脳内ワールドを表現した映像が見所でもあります。
グランドセントラル・ステーションの人混みの中を逃げ惑う二人。ここで、クレメンタインがポコポコ消えてしまうシーンや、ジョエルが子供時代への記憶に飛ぶシーンでは、身長は子供のサイズだったり、キッチンのシンクで溺れそうになる二人がいたりなどなど盛りだくさん!
サントラに入っているBeckがThe Korgisの曲をカバーした「Everybody's Gotta Learn Sometimes」も、切なくてじんわり来るのですよね。
そういえば私、ここ数年、心が揺さぶられるような恋愛って、してないなぁ……。
次回は 「こんな恋愛してみたい!」って思う作品をご紹介しますね!