一服流、ストレス・コントロール
介護って何だろう?

<やまなし介護劇場>
「母、危篤」の連絡を受け、東京から故郷山梨へ飛んで帰って早10年。50代独身の著者が愛する母を介護しながら生活する日々を明るくリアルに綴ります。

体が発信するSOSを聞こう

 六月は母が植えた梅木から、たわわに梅が実ります。今年は減塩梅干しと梅酒を仕込みました。

 今や私にとって梅仕込みは梅雨入り前の恒例行事となりましたが、母の介護がなければ、梅干しの作り方やコツなど知らないままだったでしょう。「夏至」「夏越の大祓」と一年の折り返し行事が続く六月は、母とともに浅間大社で「茅の輪くぐり」をすることも年間行事のひとつとなって久しいこの頃です。

 さて、なかなか好評だった前回の一服流「アンガーマネジメント」に引き続き、今回は雨の音を聴きながら鬱々する気持ちをふりはらうストレス対処法をご紹介したいと思います。

 私は若い頃、ストレスに鈍感でした。円形脱毛症になった時も美容院で指摘されるまで気づかず、ホルモンバランスを崩しても気にせず活動を続けるズボラっぷりで、さすがに医師から「たとえ自覚症状がなくても、女性の体は繊細だから、体からSOSが出る。しっかり休まないといけません」とたしなめられたほど。確かに若さで無理が効く頃だったとはいえ、体のケアはしっかりしておくべきだったなぁと反省しきりですが、母の介護で山梨の実家に戻ってからは、寝食ともに健康的になり、肌ツヤも良くなり、なんと死んだ足爪も生き返りました(笑)。  

 たとえストレスに鈍感でも、体は確実にSOSを出す。内臓や細胞は24時間営業中で、自分の体を修復しようと働いてくれていることを忘れてはいけない。その修復が間に合わなくなったとき、人は病に侵されるのだから。

深い呼吸、出来てますか?

 深呼吸の方法は世に出回っていますが、意識して日常に取り入れている人はどのくらいいるでしょう? 

 「女性は深い呼吸ができているか?」———これは常々、演劇人としての私のテーマでもありました。男性はデフォルトが腹式(ふくしき)呼吸という方が多いですが、女性は胸式(きょうしき)呼吸が多いのです。ですから舞台発声でも、若手女優さんたちが腹式で発声することに苦戦していることも度々。私も昔はボイストレーニングに定期的に通って習っていました。

 腹式呼吸は、頭では分かっていても、なかなか体に落とし込めないものですが、昨今の健康系YouTube動画などでは腹式呼吸ありきで進めてしまっていることが多く……はたして「女性の皆さんはしっかり対応できてるのだろうか?」と、時々いらぬ心配をしています(笑)。  

 しっかり深呼吸ができるようになると、アンガーマネジメントはもちろん、とても手軽にストレスが解消できます。深呼吸で血行促進もできるし、血の巡りや気の巡りが良くなれば、もちろん健康になります。お金もかからない健康法として、こんなにコスパのいい方法を私は他に知りません(笑)。

呼吸の原理を知ってストレスをコントロール

 呼吸が出来ない人はいませんよね(健康ならば)。人は鼻からでも口からでも、無意識レベルで1日二万回以上、生命活動として呼吸をしています。だから難しく考えなくても息を吐ききれば、自然と体は酸素を求めて息を吸います。その「量」を増やせるのが、腹式呼吸です。

 胸で息をする「胸式呼吸」は肺を横に広げるだけなので呼吸が浅くなりますが、「腹式呼吸」は肺を縦に押し下げながら広げるので肺の容量が増えて呼吸が深くなります。実際には肺の下に付いている横隔膜という筋肉が上下することで深い呼吸ができるのですが、そんなことを言われてもイメージしにくいと思うので、下のイラストをご参照ください。

胸式呼吸と腹式呼吸の違い

 しっかりと腹式呼吸で深呼吸が出来ている場合、手を腰に当てるとお腹というよりも、むしろ背中側の脇腹が膨らむ感覚が得られると思います。

 呼吸法も様々あり、たとえば医師が提唱する「4・4・8呼吸」は、息を4秒かけて吸って4秒止めて、8秒かけて吐ききるというやり方です。私の場合はヨガの呼吸法を使っていて、まず息を全部を吐ききって下腹(丹田)に力を入れて息を止め、耐えられなくなったところで体の力を抜きます。すると自然に体が深呼吸をしようと頑張ってくれるのです(笑)。その時の気持ちよさといったら……澄みきった酸素が、体の隅々まで行き渡る感覚です。

 このヨガの呼吸法は「クンバハカ」といいますが、まるで排水溝をジェット噴射で泡洗浄するようなイメージで血管洗浄されている気分になり、とてもリフレッシュできます。

 まずは息を吐ききって少しだけ止めてから息を吸ってみる。これだけです。ただ高血圧の方は、「クンバハカ」よりもマイルドな「4・4・8呼吸」の方が安全かもしれません。

 心を落ち着けたい時や一日を終える就寝前、自分の呼吸だけに集中する時間を設けてみると良いと思いますよ。

 さて、田舎町の街道沿いには手入れされたアジサイが群生し、母の目を楽しませてくれています。私の町では毎年「あじさい祭り」なるイベントも開催されていて、小高い場所にある公園に多種多様のアジサイが咲き乱れます。梅雨が通り過ぎるまで、雨露に光るアジサイの美しさに「晴耕雨読」という言葉を思い起こし、読書なぞ耽ってみようかと……いつも心に軽やかな「余裕」を持って、今日も深呼吸です。

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