<やまなし介護劇場>
「母、危篤」の連絡を受け、東京から故郷山梨へ飛んで帰って早10年。50代独身の著者が愛する母を介護しながら生活する日々を明るくリアルに綴ります。
大河ドラマ「光る君へ」最終回のあのシーン
紫式部の人生を描いた今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」も最終回の放送を終え、いよいよ年末。私は大河ドラマ・ウォッチャーで、今回の大河もフィクションを交えてはいるものの歴史の勉強にもなり、平安時代の空気感を楽しみました。
その最終回、皆さんご覧になられたでしょうか? 私にとって、とても印象深いシーンがありました。ドラマの本筋とは全く関係ない時間経過を表す場面で、幼い頃から傍らで世話を焼いてくれた乳母がある朝、認知症のごとき行動を見せたシーンです。
どうやら年老いた乳母は亡くなった家族のひとりを家の中で探している様子。こんな時、皆さんだったら乳母にどう声をかけますか? 「何言ってるの?」とか「もう居ないでしょ」とか、何げない言葉に全否定のニュアンスを投入しがちになりませんか? さらにそういうことが何度も繰り返されるとイライラしたり、怒ってしまいがちに……。
しかし、このシーンで紫式部は、乳母に合わせて「あそこよ」と自分の父親(別人)を指さします。乳母は「早く出かけないと(遅刻しますよ)」と急かせるも、父親も乳母に合わせ「今日は休みなのだ」と返答。乳母は「あぁ、そうですか」と納得して笑顔でその場から去っていき、その姿を紫式部と父親は微笑んで見守る……ただそれだけのシーンなのですが、感情的にならず、穏やかに、優しい嘘で対処する平安家族に「すごいなぁ~」と感心しました。もちろん、その後も乳母が何度も同じ質問をしてきたら、さすがの紫式部もイライラするかもしれませんが、そこはドラマですから理想的なままでシーンは終了。いにしえの家族像を見せてもらったようで、私も母に対して「もっと母の時間軸に付き添ってあげよう」という気持ちになりました。
ポジになるためには、まずネガを受け入れる
平安時代のお話の登場人物には陰陽師(おんみょうじ)がつきものですが、今回の大河ドラマにも占いや呪術で朝廷を支えたり、ときに混乱させたり、なかなか喰えない人物像で描かれておりました。私は以前から、この「陰陽師」という文字配置で、なぜ「陰」が先にくるのか気になっていました。普通に考えたら「陰(影)」ではなく「陽(光)」が先に来そうですよね?
グルーバルな啓蒙活動の代名詞は「ポジティブマインド」の作り方。前向きなマインドで人生を送るのは理想的だし、キラキラして見えます。でも私は「それでは交感神経が昂るばかりで神経がまいっちゃったり、副交感神経が働かなくなっちゃうのでは?」と思うこともあります(ひねくれすぎ?)。ポジティブになるためには、まずネガティブな自分を受け入れることが必要なのではなんて考えると、前述の「陰陽師」の文字配置は、本来、人間は陰気な生き物だから「陽気になるための職業が陰陽師だったのかも?」、つまり人々に安心感を与えるために占いをしたり呪術的なことをしたり、陰気な人間の不安をマネージメントする存在だったのかなぁ、と稚拙な平安考察をしております。
人はなんだかんだゴシップ好きだし、悪口を共有して優位性を保とうとしたり、いじめたりいじめられたりします。ホント、人って性悪だなぁ~と感じることが多いですが、考えてみれば一日の半分は夜(闇)。人生の三分の一は仮死状態(寝ている)し、昔は電気がなかったからもっと夜(闇)は長かったのでネガティブな心が育まれやすかったでしょう。そう考えると、人は半分は「闇成分」で構成されているのだと思います。
ネガティブ心のマネージメントこそが人生の肝
私は地元のタウンペーパーでも執筆しているのですが、編集部の意向もあり「日の当たらないトコロに陽を当てる」というコンセプトのもと、地元の美味しいものや美しい風土だけでなく、失われつつある行事や祭り、伝統などにもスポットを当てています。この「失われつつある……」を追う中で、かつての日本には「ネガティブなマインドをマネージメントする術があったのでは?」と感じるようになりました。
例えば、祭りと葬式。一見対極な行事ですが、昔はどちらも派手な行事でした。今は地方の小さな祭りはどんどん消えていっています。かつて葬式に「野辺送り」という荘厳なイベントがあったことなどを、コンパクト葬儀がスタンダードになりつつある現代人がどれほど知っているでしょうか。
もちろん時代とともに、前時代的なものが消えていくのを止めることはできませんし、効率よく簡単にするのが現代的です。ただ心の折り合いをつけるプロセスはそう簡単じゃないので、折り合いをつけるための儀式が失われていることが、昨今の精神疾患の増加につながっているのではないかと思ったりもします。
自己暗示で気分をコントロール
私もかつて「介護うつ」状態になったことがありました。自分がネガティブマインドに満たされていくのを、なすすべなく思考停止したこともあります。YouTubeなどで「ポジティブになれる動画」を見て一時的に気持ちが上がっても、またすぐ落ち込む……の繰り返しでした。
でもやがて「それが普通の人間なんだ」と思えるようになりました。ネガティブな感情に支配されそうになったときは「遠くの未来よりも目の前の洗い物!」と自己暗示をかけて片づけに集中し気分を整えたり、積極的に太陽光を浴びて「自然界ではチリのような自分だなぁ~」と笑ってみたり、「無力な自分を助けてね!」と仏壇や神棚に祈ることなどで、不思議と自己解放も上手になって、ネガティブとポジティブの感情をうまくコントロールできるようになりました。祈りながら「きっと上手くいく!」というポジティブな自己暗示をかけることもオススメです。このポジティブ暗示をすると、自然と心がホンワカしてきて、その日が上手く回るのです。お金もかかりませんしね(笑)。
毎日いろいろあるけれど、ネガとポジ、誰もが自分自身の陰陽師のようなものだと気づけると前向きになれるし、細かいことは「どうでもいい」って笑えるようになってきます。一緒に師走の陰陽を駆け抜けましょう!