⼾籍上の息⼦になって最も変わったことは?

第⼆章のはじまり、はじまり!

 皆さま、大変お待たせいたしました!「特別養子縁組ものがたり」の第2章の幕開けです! 

 第2章は太郎くん(我が家の息子)が戸籍上の子どもになってからのことを話しますので、これまでのお話はこちらのまとめリンクからお読みください(子どもを特別養子縁組したいと思ったところから事実上の家族になるまで)。

 まず最初に、太郎くんがようやく戸籍上の息子になってからの我が家で「変わらなかったこと」は何だと思いますか? 

 それは「毎日の生活」です。私と夫は毎日仕事へ行き、太郎くんは学校へ行く……。戸籍上の息子になってからも、毎日は淡々と過ぎていきました。

子どもの苗字の変更が必要

 長かった裁判所での手続きが終わったときは、パーッと打ち上げの宴会でもしたかったところですが、実際にはまだまだ様々な手続きが待っておりました。

 まず、戸籍上の我が子になったことで、太郎くんの「苗字の変更手続き」が必要でした。

 日本では結婚すると夫婦同姓となるのが法律上決まっているので、元々同じ苗字の者同士が結婚しない限り、夫婦のどちらかが苗字の変更手続きをする必要がありますから経験者も多いはず。苗字の変更手続きはあちらこちらの機関へ出向かなければならず、時間と労力がかかりますよね。

 我が家にとっては初めての経験となった「子どもの苗字変更」は、職場への扶養家族関連(保険証、子ども手当の受給など)、銀行口座関連の手続きが必要でした。銀行口座の手続きは銀行に出向いてその場で完了しましたが、保険証が手元に届いたのは申請から数週間後でした。私はその保険証を受け取ったことで「息子の法的な手続きがすべて終わった」という大きな達成感を感じ、その時は職場にいたものの「うお~っっっっっっ!!!」と腹の底から叫びたい気持ちになりました(思っただけで叫びませんでしたが、笑)。

戸籍上の息子になってから変わったこと

 そうして太郎くんが戸籍上の息子になってから、私が「最も変わった」と感じたことは3つあります。

 ひとつは医療機関の受診。日本では「親子は苗字が同じもの」というのが社会に浸透しているので、太郎くんの里親だった私と太郎くんは苗字が異なっていたため、里親であることを証明する書類を毎回提出させられました。なかでも特に初めて受診する医療機関は厄介で、私がありとあらゆる書類を提出して説明しても、「里親って何ですか?」「このふたりの関係を証明してください」という反応で、受診するための受付だけでも本当に一苦労でした。そもそも医療機関には息子の体調が優れないから行っているわけですから、「苗字が違うことで、今日はどんな扱いを受けるのだろう?」と思うだけで、足取りが重くなって……。

 それが、太郎くんが戸籍上の息子になり私と苗字が同じになった途端、受付がどこでもすんなりいくようになりました。医療機関へ行くたびに襲われる暗い気持ちが、それにより一気に晴れ上がったことは言うまでもありません。

 ふたつ目に変わったことは、児童相談所からのサポートがなくなってしまったことでした(涙)。戸籍上の子どもになるまでは児童相談所の担当職員と定期的に連絡を取り合い、日々の様子を報告したり、何かあった際には相談をしたりしてサポートを受けていましたが、戸籍上の親子となると途端に児童相談所の管轄ではなくなってしまいます。

 当時は法的な子どもになったのだから通知を受けたときは当然だと納得しましたが、後々、児童相談所に相談したいことが起きたことが何度もあり、「サポートが継続していてくれたら……」と思ったことが度々ありました。

 我が家の場合は幸いにも、息子が我が家へ来る前に生活していた児童養護施設が、「何かありましたら、お気軽にご連絡ご相談ください」と常におっしゃってくださったので、その言葉に甘えさせていただき、本当に助けていただきました。施設で行われるお祭りなどのイベントにも招待してくださり、息子の成長を見ていただく良い機会にもなりました。そうやって我が家は児童養護施設と定期的に連絡を取り合っていましたが、特別養子縁組をした他の養親は「児童相談所からのサポートが継続していたら…」と嘆いていたので、法的な子どもになった途端に管轄が変わるシステムは改善した方が悩みの少ない特別養子縁組が増えると思います。

 戸籍上の子どもになって変わったことの3つ目は、親として胸を張って「この子は私の息子です」と言えるようになったことです。

 それまでも日々の生活の中で「お母さん」、「息子さん」などと呼ばれたりして、他人から見れば「紛れもない親子」に見えていたと思うのですが、私の心の中では「親子であることを証明してくださいと言われたらどうしよう」というようなある種の恐怖心を感じたり、「実は親子ではないんだけど……」と、まるで自分が嘘をついているように感じたりと様々な思いが心をよぎることがありました。それが、太郎くんが戸籍上の子どもになったことでなくなった——これは私にとって大きな変化でした。

 このように特別養子縁組を通して、戸籍上の子どもになってからも様々な経験をしながら日々を送っています。次回もどうぞお楽しみに~!

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