
【国際結婚・海外移住の質問に答えます!】
人生の選択肢を海外へ広げたいGo Women Go読者の皆さんからの様々なご質問に、国際結婚歴16年のジョーンズ千穂さんがアメリカから答えます。
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読者からの質問:米旅行中に現地の人の写真を撮ったら怒られました
アメリカを旅行したときに写真をたくさん撮りましたが、アメリカ人に「私を入れて撮らないで」と言われて驚きました。私はその人を撮ったのではなく画角に入ってしまっただけなのに自意識過剰だと思います。アメリカ人は自己主張が激しいと聞いていますが、自意識過剰な人の気に触ったのでしょうか? そういうときはどうすればいいですか?
その写真の行方は撮られた方にはわからない
こんにちは! アメリカには歴史的な名所や世界遺産や人気映画・ドラマのゆかりの地など、いつかは行ってみたいと思う場所がたくさんありますよね! 今だとメジャーリーグ(MLB)のロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平選手の試合を見るために日本からの観光客がとても増えています。私の母も大谷選手の大ファンで、母が日本から遊びに来た時に一緒に試合を見に行きましたが、85歳の母が大谷選手の姿が目に入っただけで乙女になっていました、笑。 もしあんなに楽しんでいた母と記念の写真を撮っている時に相談者さんのような状況になったら、たしかにガッカリしちゃいます。不快な思いをするのはとても残念ですよね。
では、なぜそんなことを言われたのか? アメリカで考えられうる理由からお話しましょう。
まず、質問者さんは他人が映り込んだ写真をその人の許可なく公開するのはNGだってことは、ご存知ですか? 質問者さんは公開する気がない写真でも、映り込んだ人はその写真がどういう行方を辿るかはわかりませんよね。なので相手側の立場に立ってみると拒否した人の気持ちも少し分かるかも。
ただいま絶賛インバウンドブームの日本で撮影した満員電車の中の写真を撮っている外国人のSNS投稿をよく見掛けます。日本人にとっては満員電車が日常でも、普段まったく電車に乗らない外国人にとっては「これが日本の満員電車なのか! 貴重な体験だ!」と浮かれてしまい、そこに誰がいようがお構いなく写真を撮って投稿してしまう———私もその気持ちはなんとなく分かります。でも顔が見えている人の許可がない写真をSNSに投稿するのはモラルに欠ける(他人に迷惑を掛けても気にしない人)と思われるので、私は写真を撮りたい衝動があっても公共の場では控えるようにしています。それに、もしも変なタイミングで撮られた自分の表情が知らない誰かのSNS投稿で不特定多数の人に見られたら……と考えたら、かなーり嫌な気分になるので(笑)、私もやらないようにしようと。
許可なしで写真を撮る、しかもそれを投稿する、という人はたくさんいるので、アメリカとか日本とかではなく、それは個人のモラルや常識の違いかと思います。SNS上では外国人を「害人」と呼ぶこともあるそうですが、質問者さんがアメリカでしたことは基本的には相手からすると日本の電車の中を撮った外国人と同じだと思われたのではないでしょうか。
デジタル・タトゥーのリスク
アメリカでは「プライバシーの保護」「マナー重視」「子どもの誘拐を防ぐ」などの理由で他人に写真を撮られることを嫌ったり、控える人が結構大勢います。
日本人は日本にいる家族や友人に見せたいなどの理由で「食事の写真を撮る」のが好きな方が多いと思いますが(←私です。笑)、アメリカではレストランでスマホを食事中にいじるのは「マナーが良くない」と嫌う人もいるので注意しておきたいところです。
信じられないかも知れませんが、アメリカ人はレストランやホームパーティーで食事をする際、何かのお祝いやイベントでなければ写真を撮ることが少ないです(日本人と比較して)。SNSなどでプライベート写真が載るのを好ましく思わない人や、顔バレをしない方がいい仕事をしている人などは、それが知人や友人のホームパーティーであっても集合写真に入らないこともあるんですよ。
別にスパイとか刑事ではなくても、「えーっ? そのお仕事でも誰かの写真に映らないように気にしなくちゃいけないの?」という場合もあるので驚かされます(そういうお仕事の方とその家族の入った写真は公開も投稿できない、だから最初から入らない)。つまり自意識過剰ではなく、自分の仕事の保身のため、という場合もあるんですね。SNSに投稿されるか否かだけでなく、自分が写りこんだ写真を「誰が見るか分からない」とか、仕事に関係なく「一度投稿されたらデジタル・タトゥーになるから、何が起こるか分からないので嫌だ」という方も結構います。
なので一概に質問者さんが遭遇した(もしくはご友人)のアメリカ人が特に自意識過剰だったり、自己主張が激しいわけではないと思われます。
子どもの写真を撮られるのはNGなアメリカ
アメリカあるある話を加えると「子どもの写真を撮られるのを嫌がる人」がアメリカにはたくさんいます。ここには日本と大きな差があると思います。その理由は家族のプライバシーを守るためだけでなく、アメリカでは「子どもの顔が知られることで誘拐事件に繋がる」ことも多いからです。
スーパーマーケットのショッピングカートに子どもを乗せてベルトをするのは、落下防止のためだけでなく、子どもを簡単にさっと他人に連れ去られないようにするためでもあるってことを知っていますか? 外出中に子どもをひとりでお手洗いに行かせないのも同じ理由だし、子どもだけで家でお留守番をさせるのは法律違反です(州によって何歳までという年齢が異なる)。日本では考えられないと思いますが、それだけ「誘拐」が多いんです。
「誘拐」と聞くと「うちは身代金を払えるようなお金持ちじゃないから関係ない」と考えるかもしれませんが、今のアメリカでは「誘拐」のほとんどは「Human Trafficking(人身売買)」。どこかの国や組織にその子どもを「売るための誘拐」です。性的な仕事に従事させたり、子どもがいない人に売ったり、臓器や部位だけを取り出して売ったりという恐ろしい目的のための誘拐がずいぶんと前から多発しています。その証拠に(普通に生活しているとスルーしがちですが)、アメリカには行方不明の子どもたちがものすごくたくさんいて、スーパーなどのお店や公共機関の掲示板やチラシなどに幼い子どもからティーンエイジャーの写真がどっさりと掲示されています。たまにニュースで「地下室から子どもが数十人見つかった」とか「15年前に連れ去られて以来、手錠をかけられて監禁された子どもが発見された」なんていう映画のような報道が本当にあるので、アメリカに長く住んでいても「アメリカっていうところは……」と驚愕させられます。
ということで、今回のご質問への回答は「自分が知っている人以外がフレームに入らないように気をつけよう」です。もし、たまたま入ってしまい相手からクレームをつけられたら、相手に謝って目の前で写真を消去するか、その人を入れたい理由を伝えてみてはいかがでしょう? 「同じことを自分が日本でされたらどう思うか」を基準にするといいと思います!

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