「見えない存在」の翻訳者を「見える存在」へ

チャンネル登録者数8000人を達成!

 こんにちは、ランサムはなです。先日、私が運営しているYouTubeチャンネル「ランサムはなTV」が、ありがたいことにチャンネル登録者数8000人を突破しました(2025年4月現在、8200人)。

 ユーチューバー・デビューする年齢としてはアラフィフと遅めで、本当は「黒子」に徹していたかった私が恥を忍んでYouTubeをスタートするにいたったいきさつは以前の当コラムでも何度かお話ししましたが、始める時に自分で決めたのは、「腹を括って人前に顔を出す以上は、一定の成果を出したい」ということでした。「成果」の定義は人それぞれですが、私は「登録者が1万人に到達するまでは続ける」という目標を立てました。

「見えない存在」の翻訳者を「見える存在」へ

 とは言え、どうすれば1万人に辿り着けるのか、具体的な施策があったわけではありません。翻訳などの作業は基本的に個人作業ですから、クラスを取るとか寝る時間を削るとか、自分1人で工夫・努力すれば成長する部分がありますが、チャンネル登録者数は視聴者さんが評価してくださらなければ増えません。それだけ多くの方に支持、協力していただくためにはどうすれば良いのか。正直なところ、全く見当がつきませんでした。

 YouTube攻略本を読んだり、成功しているユーチューバーさんの話を聞いたりすると、「ほぼ毎日、少なくとも週3回は動画を投稿しないと効果がない」ということでしたが、私は本業の合間にやっているので週1回更新がやっと……。それに加えて私のチャンネルは「翻訳」x「通訳」x「海外生活」x「フリーランス」というニッチなテーマ。「AIや機械翻訳の発達で逆風が吹いている翻訳業に興味を持ってくれる人などいるのだろうか?」という不安もありました。

 とは言え、翻訳した書籍や書類の陰に隠れた「見えない存在」である「翻訳者」の顔を出して、私たちも生身の人間であることを多くの人に知ってもらいたいとも思いました。ワークショップを開催すると、異口同音に「生の翻訳者に初めて会った」と言われますが、同業者同士でさえ自分たちの存在は「見えない存在」。まるで透明人間です。翻訳者の存在を意識的にアピールしていかないと、機械翻訳の普及に伴い、人間の翻訳者はそれこそ「なかったこと」にされてしまうのではないか?   そんなことが絶対にあってはいけないと思い、あえて「翻訳」というテーマを前面に打ち出して、現役翻訳者・通訳者や翻訳塾の生徒さんたちに出演協力を依頼しながらチャンネルを5年間コツコツ運営し続けてきました。この活動が少しでも翻訳者・通訳者の地位向上や認知につながればと願いながら……。

言語学習は今でも熱い

 5年ほどYouTubeチャンネルを運営していて気付いたことは、「言語学習は今でも熱い」こと、そして「コミュニティの重要性」です。

 私のチャンネルで最近爆伸びしているのが、「多言語学習」をテーマにした対談動画です。34言語を習得した多言語翻訳者・渡辺乃莉子さんとの対談や、50代を過ぎてから9か国語をマスターした翻訳家の宮崎伸治さんとの対談は再生回数が2万回~5万回を記録するヒットになりました。

渡辺乃莉子さんの動画のリンク↓

宮崎伸治さんの動画のリンク↓

 この反応を見ると、どんなに機械翻訳や生成AIが発達しても、外国語を学習することに価値や意義を見出している人はまだまだたくさんいることがわかります。受験勉強や海外出張・駐在などのために英語を勉強する人は多いですが、英語だけでなく他の外国語を学ぶことで自分の世界が広がることを実感している人も少なからずいるようです。出演者の渡辺乃莉子さんがおっしゃっていたように、他の言語を学習すると、たとえばイタリア語を勉強することで自分の料理が変わる、フランス語を勉強することでおしゃれのセンスが磨かれるなど、日本語だけで生活しているときには得られない視点や情報に触れ、人生が豊かなものになるという側面があります。そのことに多くの視聴者が共感を示していました。

 これによりAIや自動翻訳がどれだけ発達しても、世界各地のさまざまな価値観や情報に触れながら深い意味を見出していくという作業は、人間にしかできないことであることを実感させられました。

コミュニティ運営は人にしかできない

 YouTubeを運営して得られたもう1つの気づきは「コミュニティの重要性」です。基本、在宅で人と話す機会もなく、悩み事があっても一人で解決しなければいけない孤独な翻訳者にとって、気軽に情報交換や悩み相談ができる場所は貴重なので、私は2021年からオンラインで翻訳塾を運営しています。YouTubeチャンネルで紹介・宣伝もしているからか、翻訳業はオワコンと言われつつも生徒さんが途絶えたことはなく、ここ4年ほどおかげさまで継続して運営しています。

 私自身、長年一人で翻訳業をしてきて横のつながりの重要性を実感したから翻訳塾を始めたわけですが、「仲間同士の絆を育てる」といったモデレーター的な仕事はAIには務まらないことを最近実感しています。

 もちろん、ChatGPTに相談して解決できることもあると思います。ですが「今後どのように歩みを進めていったらよいのか」などの漠然とした悩みは、多くの先輩や仲間の話を聞いて、自分の中で総合的に判断していかなければなりません。画一的な判断ができない人生の重大な決断を下すには、やはり人間が寄り添い、サポートしていくことが必要だと思います。

 稼げる翻訳者として独り立ちできるように支援することを目的に始めたコミュニティですが、今では出演してくださった塾生さんの動画が伸びてチャンネル登録者数が増えるなど、私の方が生徒さんに助けていただく現象も起きています。とても雰囲気が良く質の高いコミュニティに育っているので、今後もこの調子で成長していければと願っています。

 専業のユーチューバーに比べると時間はかかりましたが、登録者数8000人に到達できたのは、視聴者、出演者、塾生の皆様方、そしてスタート時からずっと支えてくれている動画編集チームのおかげです。今後はショート動画やライブなども加え、目標の1万人に向けて続けていきますので、『Go Women Go』の読者の皆様もチャンネル登録していただけると嬉しいです。

ランサムはなのワンポイント英語レッスン

「バズる」は「Go viral」

 動画やSNSの投稿が「バズる」ことを英語では「Go viral」と言います。「viral」はウイルスを意味する「virus」の形容詞形なので、ウイルスが急速に蔓延するイメージです。「Buzz」は英語ではハチがぶんぶん飛び回るときの音のイメージで、「ざわつく」「噂」などの意味があり、「Buzzword」などという言葉もありますが、「バズる」と言いたいときに動詞として使うことはありません。

写真で見る 看板・標識・ラベル・パッケージの英語表現ランサムはな著

写真と動画で見る ジェスチャー・ボディランゲージの英語表現』ランサムはな著

ランサムはな YouTubeチャンネルの宣伝バナー2
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