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時には、あえて寄り道をすることで見えてくることも
アラフィフともなれば、人生っていろいろ。時にはあえて寄り道をすることで、見えてくるものもあるのでは?
今宵はワインと共に、カンヌからパリへゆったりと旅をしてみませんか?
今回ご紹介する作品は、人生の半ばに立った女性が思わぬ旅をきっかけに人生を改めて見つめ直し、その喜びを知って行く「ボンジュール・アン」(原題:Paris Can Wait)。目にも美味しい1本です。まずは予告からどうぞ。
(予告編の説明に貼られているリンクは公式サイトではないことをご了承ください。)
Vol. 4 「ボンジュール・アン」
ダイアン・レイン主演のこの作品は、2017年に81歳にして監督・脚本デビューをしたエレノア・コッポラによるもの。いくつになっても情熱を持つことって、素敵ですよね。しかも、お話のベースはエレノア監督自身だそう。
ご主人はかの有名なフランシス・フォード・コッポラ監督ですが、実は彼、かなりのわがまま放題というお噂。アレック・ボールドウィンが、まさにそんな夫を演じています。
ひとつ目の寄り道
アン(ダイアン・レイン)を車でパリまで送ることを引き受けた夫の同僚、ジャック(アルノー・ヴィアール)。ジャックが最初に寄り道したのは、テラスがある素敵なレストランです。まだカンヌだというのにランチに誘い、「ワイン、いかが?」とリラックモードのジャック。ここで多分、数時間は経っているはずです(笑)。
フランスの方はお食事の時間を大切にされますよね〜。こんなモードで旅が続いて行くのです。アメリカ人が描く典型的すぎるフランス男=ジャックはユーモアたっぷり。褒め上手でエスコート上手、ワイン通で美食家、そしてアッシーくん(古っ)。
でも、これはエレノア・コッポラ監督が「女性にモテたいのなら、ここまでしなさいよ」と教えてくれる男性へのメッセージかも知れませんね。
ここでアンが口にするワインがとても美味しそう! 特に一口目を飲んだ後の彼女の表情がパッと明るくなることに注目です。私も赤ワインは大好き。これは「シャトー・ヌフ・デュ・パフ」という南フランスの代表的なワインだそう。彼女の中で、何かが変わって行きそうな気配が……。
ふたつ目の寄り道
サント・ビクトワール、ラベンダー畑を通り、ヴィエンヌに到着。先を急ぐアンを制して、ジャックはホテルに隣接する素敵なレストランの夕食を予約します。
髪の毛をアップにしてドレス、エレガントなジュエリーを身に付けホテルの部屋からアンが階下へ降りてくるのですが、ここでのダイアン・レインはアラフィフになっても美しく、かつソフィスティケーテッド。ドレスの色は赤。旅に出た時はTOD'Sのグレイのバッグに合わせた地味なカジュアルウェアだったので、衣装の変化にもアンの心情が表われています。
ここまで演出してくれたらワインがなくとも女性は酔ってしまいそうですが、二人の前に並んだワイングラスは4種類! ここに私が絶対にこのお料理と一緒に飲んでみたいワインが登場します。子羊と仔牛のロースと共に出された赤ワイン、「コート・ロティ」。早速、検索しちゃいました(笑)。
お話が色気より食い気に寄り道しましたが(苦笑)、ここでアンはお酒のせいか、常に持ち歩いているライカのカメラに収められている娘の写真を見ながら、「子育てが終わった今、自分はこれから何をしていったら良いのかしら」と呟くのです。ジャックに「今 幸せ?」と聞かれ動揺してしまうアン。少しずつ距離が近づいている様子。
他の寄り道も絵になるところばかり。パリ行きは何処へ?
ワインをたくさん頂いた翌日は、名所や遺跡巡り。
予告編にも出てくるローヌ川でのピクニックのシーンでは、近くに生えていた新鮮なクレソンにフルーツ、ブレッド、チーズ、そしてワインが揃います。この五つ星ピクニックは是非お手本にしたいですね。
このシーンの後には、マネの名作「草上の昼食」の油彩画が使われますが、この映画では所々にセザンヌやルノワールなどシーンに合わせた絵画が差し込まれ、アートと共に旅をしている気分にさせてくれます。
続いての寄り道は、やっとフランスの心臓部リヨンで。二人はまず映画を発明した兄弟のリュミエール研究所を訪れます。
そして、私も是非行ってみたい場所、フランス一番の市場「ボール・ボギューズ市場」へ向かいます。ありとあらゆる高級食材も揃うこの市場の中には、200年に渡りチーズを売っている家族が経営するお店があるのですが、ヤギのチーズを試食するシーンは堪りません! これとワインがあれば、私はこの上なく幸せになれるので、必ずいつか行かなくては!
次は織物博物館。NYの洋服屋を閉めたばかりのアンは、改めてここで自分のパッションを見つけます。リヨンは昔、絹産業で栄た街ですから、私も訪れてみたい街のひとつです。息を呑むほど豪華絢爛で、世界の織物芸術の歴史を余すことなく見られます。
その後、「寄り道はもう十分、早くパリへ」と言っていたアンが、ヴェズレイの標識を見た途端 「あの大聖堂へ行きましょう!」とジャックを驚かせます。
二人が入ったのはマグダラのマリアの遺骨も修められているサント・マドレーヌ大聖堂。イエスを抱いたマリア像を見ながら涙を流すアン。そこで胸に秘めていた話をジャックに打ち明けるのでした。
最後の寄り道
最後の寄り道は、ヴェズレイのレストラン。ワインの説明をするジャック。
ここでアンは ふとジャックに対しての想いを感じるのです。夫マイケルからの電話が入り、相変わらずのマイペースぶりに諦めを感じながらも動揺せず、余裕の表情をも浮かべワインを一口味わうアン。
ジャックが薦めたデザートは「ヴィーナスの乳首」というチョコレート・コーティングの一皿。予告編にも出ていますよ。ジャックの演出はいちいち憎い。幸せはレストランのテーブルから生まれるのでしょうか?
そして終着地のパリへと向かう二人。会話も少なくなり、別れの時が近づき、ジャックは自分の感情を抑えきれず再会を約束するのですが……。
この先が気になる方は、是非この作品を最後まで召し上がってみて下さいませ。ラストのアンの表情にご注目です。
皆様もたまには、大人の寄り道をして新しいものを見つけてみてくださいね。
人生はまだまだ素敵!
次回もお楽しみに!
「ボンジュール・アン」(原題:Paris Can Wait)