重い女に見られないよう、サバサバ系を演じてみる

マニュアルに振り回されて策に溺れたケース

 合コンや婚活パーティーで勝利をつかむマニュアルは山のようにあります。好感度アップのためには、ゆるふわパーマにナチュラルメイク&ネイル。パステルカラーに身を包み、冬でも半袖ニットでさりげない露出を……、なんてことが鉄則のように記されています。それが普段の自分と大きく乖離しなければストレスはないのですが、無理してマニュアルに準じてしまうと苦行にしかなりません。今回お話は、マニュアルに振り回されて策に溺れたケースです。

仕事には自信がある、39歳のサバ子さん

 アパレル企業でMD(マーチャンダイザー)を務めるサバ子さんは、39歳。子どもの頃から几帳面な性格で学校の成績も優秀でした。何事にも慎重で物事を始めるときはきちんと準備をして石橋をたたいて渡ります。ただ、あがり症で本番は苦手。ここ一番の試験や面接で頭が真っ白になったことも数しれず。そんなサバ子さんですがコツコツと実績を積み上げ、今では主力ブランドの商品・販売計画から予算管理までを担うMDとして活躍しています。真面目で的確な仕事ぶりは上司や部下からの信頼も厚く、仕事にはそれなりの手応えを感じています。だけど埋められないのが、心にぽっかり空いた彼氏がいないという大きな穴。前の恋は、いつだっけ? ああ、あれはもう8年も前……。

サバ子A「彼氏が欲しい。どうしたらいいの?」
サバ子B「出会がないなら、合コンや婚活パーティーに行けば?」
サバ子A「やだ、そんなのかっこ悪いよ、恥ずかしい」
サバ子B「だって、このままではいつまでたっても出会いがないよ」
サバ子A「それはそうだけど……。でもでもやっぱり恥ずかしい」

 そんな自問自答を繰り返し、一大決心をして婚活パーティーに参加することにしました。「絶対に失敗はできない!」。もともと勉強好きなサバ子さんです。片っ端からマニュアル本を読み込んで要点パワーポイントにまとめました。どんな質問がきても答えられるように台本も作成。「これだけ準備をしたんだから大丈夫」。安心は自信につながります。

サバ子さんの努力は報われたか?

 準備万端で迎えた本番。普段はパンツスーツのサバ子さん、久しぶりに膝下のフレアスカートと淡いピンクのアンサンブルで身を包み、ピンクのグロスを唇に乗せてみました。バッグは質の良いノーブランドのショルダー。趣味は映画鑑賞と読書だけど、あまり特徴がないので散歩を付け加えることにしました。酒豪でワインが大好きなサバ子さんですが、お酒は弱い設定に。何より気を配ったのが、男性がもっとも嫌うという重い女に見られないように、サバサバ系を演じること

 自己紹介タイムでは、マニュアル通りに、相手が「はい」、「いいえ」で答えられない質問を投げかけました。もちろん、相手の目をしっかり見つめて、口角はしっかり上げます。まるで女優になった気分でした。第一印象では、ピンとくる人はいませんでしたが、消去法で選んだ人にマニュアル通りに自分が気になっていることをアピールするメッセージを書きました。すると印象チェックでサバ子さんを指名してくれた人が2人も!

 フリータイムでその2人と話をしてみました。A男は専門商社勤め。映画とワインが好きな40歳でした。アクション映画好きな彼とファンタジーやホラーが好きなサバ子さんでは映画の趣味はまったく合いませんでしたが、一生懸命にA男の話に合わせます。しかし、話題がワインになったとたんに我慢の限界が! ワインに関しては一晩中でもウンチクが語れるほど詳しいサバ子さんです。A男の間違いだらけの知識についついダメ出ししてしまい、彼の表情は凍りつきました。

 流通系のB男は爽やか系のややイケメン。ルックスでは、かなりの合格点です。筋トレが趣味らしく、延々と筋肉自慢が続きます。サバ子さんの話はろくに聞かず、自慢話に終始しましたが、愛想笑いで応えました。結果、マッチング発表でサバ子さんは誰ともマッチングが成立しませんでした。

相手の理想に合わせるのは、もう嫌!

 しかし、不思議と失望感はありません。それよりも、自分ではない誰かを演じた無理やり劇の舞台から下りた開放感で心がすっきり。引きつりそうだった口角の筋肉がじわじわと弛緩して気持ちいい! 

 輪郭のない相手の好みに合わせて自分らしさを消すなんて、なんと窮屈なことか! 

 それからワイン検定のスクールに通うようになり、そこで知り合った男性たちとワイン・バーに行ったり、SNSのホラー映画サークルに参加して、映画仲間とオフ会を楽しんでいます。まだ彼氏と呼べるような相手は見つかっていませんが、渇いていた心に潤いが戻ってきました。

「相手の理想に合わせるのはもう嫌! では、いったい私の理想の相手ってどんな人?」。

 次回は、理想の男性を導き出すとともに、自分を見つめる方法のお話をしましょう。

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