私では息子のパスポートを取得できない?!

里親期間に子どものパスポートが必要になったら……

 我が家にとって「太郎くんのパスポート取得」は、太郎くんを我が家に迎え入れる前から最も気にかかっていたことのひとつでした。私は日本人ですが、夫はアメリカ人なので、いつ家族でアメリカに渡航しなければいけない状況になるのか予測できなかったからです。不測の事態に対応できるよう「太郎くんのパスポートを一刻でも早く取得する」ことは我が家のやることリストの上位に鎮座していました。

 パスポートの取得に欠かせないのが戸籍です。里親時代は私と太郎くん(ふたりとも日本国籍保持者)が同居していても親子関係が証明できない状況だったので、それでも太郎くんのパスポートを取得できるのかといろいろ心配しました。「実親さんでないと対応できないのかもしれない」とか「もし取得できても、出入国管理の際に誘拐を疑われるかもしれない」とか……。

 夫もこの答えが分からなかったので、里親研修(第3話・第4話)の際にお世話になった担当者さんに尋ねました。すると、「児童相談所がこの児童に旅券(パスポート)の取得の必要である旨を記載した書類を準備します。戸籍については、児童相談所が親権者に代わり取得できる方法がありますので、それもこちらで準備します」と回答してくれました。つまり、児童相談所が私たちに代わって「この児童は現在、里親に委託されており、里父が外国籍。家庭の事情により里親委託期間中に里父の国へ渡航する可能性がある」ということを記載した書類を用意してくださるとわかったのです。

 私はこれを聞いて、これまで生きてきた中で感じたことのないくらいの安堵を感じました。

特別養子縁組が成立すると息子の苗字が変わる

 児童相談所に相談した数週間後、太郎くんのパスポート取得に必要な書類が手元に全て整いました。すると、これまで思ってもいなかったことが突然、頭をよぎりました。

 「特別養子縁組が成立すると苗字が変わる。と言うことは、今、太郎くんのパスポートを取得しても新しい苗字で再度、取得しないといけないのでは?」

 当然、申請費用も再度かかるし、申請するには当局に出向く必要があるので仕事を休まなければなりません。「本当に今、申請する必要あるのか?」「いや、パスポートを取得していなかったことで後悔することが起きるかもしれない……」など、答えの出ない「もしも」が頭の中をグルグル回り続けました。  

 結局、太郎くんのパスポートを取得したのは特別養子縁組が成立した直後でした。特別養子縁組が成立するまでは、「頼むから外国へ渡航しなければいけない状況にならないでくれ~!」と心の中で叫ぶ日々が続きましたが、そういう状況にはならず、本当に助かりました。

特別養子縁組が成立したら書類が激減

 初めてのパスポート申請は思いのほかスムーズでした。提出したのは太郎くんが我が子として記載されている戸籍謄本の写しのみ。里親だった期間中は、公共機関や病院など、どこへ行っても親子関係を証明する様々な書類をあれこれ求められていましたが、特別養子縁組が成立したら求められる書類がぐんと減りました。良い意味で驚かされたというか、特別養子縁組の社会的な意味を実感しました。

 パスポートの申請には私がひとりで行きましたが、受け取りは本人が出頭する必要があるので太郎くんを連れて行きました。本人確認のために名前と生年月日を聞かれると思い、それを言う練習を何日か渡り何度もやってから本番に臨んだところ、はっきりと答えることができたのでホッとしました。

 こうして息子はパスポートを取得。さて、これを持って初めて海外渡航をしたのは、いつだったでしょうか。次回もお楽しみに~!

追伸:
 読者の方から、実子が成人したので里親になりたいというメールをいただきました。この記事を読んでくださっていることや、そういうお考えをしている方がいらっしゃることがわかり大変嬉しく思っています。しかしながら私は一般人ですので自分の話は共有できても、他の方々に法的なアドバイスをすることはできません。下記のような機関で相談にのっていただけるはずなので、ぜひ各機関に問い合わせてみてください(下記のバナーをクリックしてください)。いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!

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