地球には無駄がない!
介護って何だろう?

<やまなし介護劇場>
「母、危篤」の連絡を受け、東京から故郷山梨へ飛んで帰って早10年。50代独身の著者が愛する母を介護しながら生活する日々を明るくリアルに綴ります。

健康という眩しいワードを手にいれたい

 今の私の目標は、自分の健康寿命を伸ばすこと。低い目標に思われるかも知れませんが、両親を介護してきた者からすると「健康」って、ご本尊をあがめるがごとく眩しいワードなのです、笑。

 健康でいるためにダンスや筋トレもしていますし、半年ほど前からウォーキングも開始し、今のところ体調はすこぶる好調です。

 さらに介護で思うように働けない環境なので、倹約のために庭先に生い茂ったヨモギで化粧品を手作りしていたら、お肌の調子も良くなりました。母の介護をするために帰郷した10年ほど前に沿道に茂っていたヨモギを庭に移植したんですが、当時は父に「ヨモギはすごく繁殖するんだぞ。バカなことして!」と叱られました。確かにヨモギの繁殖力はすごくて毎年、手入れは苦労していますが、そのおかげで今はお肌のトラブルがなくなったり、整腸作用が感じられるので「地球には無駄がない!」と豪語しています、笑。

演劇をやっていてよかった!

 「地球には無駄がない」ことの例をもうひとつ。親の介護で今は活動を中断していますが、私は小さな劇団を主催しています。そして長年演劇をやってきた私は「声がデカい」(笑)。

 介護で帰郷してから、この地でできることを探して一時期バイトで水泳講師をやったのですが、プールの喧噪に負けないほど大きな声が張れるので、生徒さん達にしっかり指示を伝えられました。バタ足を教えながら「演劇やっててよかった~」と思った瞬間でした、笑。

 舞台発声は声帯を傷つけないよう、無駄な力を抜いて自然な発声が基本。腹式呼吸で発声することで、深く響きのある声になります。自分の声色が響きを持つと人前で話すことも軽やかになります。今も母の介護をしながら、人に指導する仕事もしていますが、こもり声や小声ではよく聞こえないし、相手の心にも伝わりにくいもの。声のボリュームや声を飛ばす方向が意識しなくても身についているのは演劇のおかげ。介護の時も上手に猫なで声が出せるのも「演劇やっててよかった~」と思います、笑。

ダンスをやっていてよかった!

 もうひとつ自己肯定をしますが(いや、地球には無駄がないという話)、ダンスもやっていて良かったと思うことのひとつです。

 演劇を続けるうえで何かしらの武器を身につけようと始めた稽古事の中で、思いがけず長続きしたのがダンスでした。ダンスは体力がつき、柔軟性も高まり、立ち姿も自然と美しくなり、何よりも踊っていると楽しくストレスが解消できて気分転換になります。

 稽古事はハマるか否かが継続の鍵だと思いますが、私の場合、ダンスは見事ハマりました。今もズンバ、ジャズ、ヒップホップ、タップダンスなどを定期的に踊って楽しんでいます。筋トレ要素もある有酸素運動なので健康維持にも役立っていますし、介護でやさぐれそうな心も浄化してくれるので(笑)、これも地球には無駄がないよい例だと思います。

 介護はとかく自分のペースを乱されるものです。だから週一回でもいい、自分のための時間を設けてガス抜きすることをお勧めします。私のガス抜きは体を動かすことですが、時として心ざわめきながらでも体を動かし始めると血の巡りも良くなるので、いつの間にか気持ちも「整う」のです。気分が爽快になれば、細胞レベルで体が修復されています。地球には無駄がないのです。

田舎道を楽しくウオーキング。ワンちゃんに吠えられながら……

なぜ自分のための時間が必要なのか?

 なぜ自分のための時間を設けることが必要なのでしょう? それは私たち介護人は、この介護が終わってからも人生が続くからです。

 私もその時が来たら燃え尽きてしまわないように、自分の人生を続けて行けるように、そんな気持ちで小さなチャレンジを続けています。

 私の小さなチャレンジのひとつには、この連載を続けることも入っています。「55歳の独身女が家族の介護をしながら成長していけるのか?」「介護から得られる人生観とは何なのか?」。書くことを通して、そんなことを常々考えるようになりました。考える機会を得ただけでなく、これを書いていることがご縁で「HuMan」という南山梨地域のタウンペーパーの記者も始めました。

 介護によって社会から少しひきこもりがちだった私が、地域の方々と接しているうちに、ふたたび次々とご縁がつながっていき、地域の古民家喫茶室で行なわれる「朗読会」にも参加することになりました。これこそ地球には無駄がないし、人生にも無駄はないという話だと思います。いくつになってもチャレンジは出来るし、その時々の縁で知らない自分に会えることだって出来るのだから。

 そのためにも健康には留意して、寒くなって少しペースダウンしているウォーキングも四季の移り変わりを感じて心研ぎ澄まされる自分だけの時間にするために頑張ろうと思います。介護人の皆さま、ぜひ自分のためだけの時間を作ってください。それが、やがて知らない自分に会わせてくれるかも知れません。お互いがんばりましょう!

『100万回生きたねこ』の佐野洋子さんが幼少期を過ごした古民家、喫茶室「油屋」で朗読会。
『100万回生きたねこ』の佐野洋子さんが幼少期を過ごした古民家でもある喫茶室「油屋」で朗読会。友部正人ポエット随筆『生活が好きになった』の一節を朗読。終わった後、本を知りたいと声をかけてくれたお客様がいて「やってよかった!」と嬉しかった
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