「成人式」で思い出した、日本の親子関係
こんにちは、ランサムはなです。2023年が始まりましたね。アメリカは年明けからすぐ仕事が始まるので、元旦や成人の日など祝日が目白押しで正月休暇モードが続く日本が羨ましかったです。
成人式の報道をネットで見かけて、「そうだ、日本では成人になることを盛大にお祝いする習慣があったな」と改めて思い出しました。私は日本で成人を迎えましたが(だいぶ以前の話ですが)、当時は多くの親御さんが何十万円もする成人式の着物を子どもに買ってあげていました。そんな中で私は、「成人式の着物を買うお金があるのなら、そのお金でアメリカに行かせてほしい」と両親にせがみ、20歳にして初めてアメリカの土を踏んだ経験が今の私につながっているので、着物代を留学費用に充ててくれた両親にはとても感謝しています。おかげで今はアメリカに住んでいますが、アメリカの学生たちを見ていると、自分は両親にずいぶん散財させてしまったなと思わずにはいられません。
アメリカの学生は、アメリカの大学の授業料が日本よりも高額なところが多いにもかかわらず、学資ローンを組むなどして自分で授業料を負担している例が少なくありません。なかには高校時代から自立して、アルバイトをいくつも掛け持ちしながら奨学金に応募し、多額の学資ローンの負債を抱えて大学を卒業する苦学生も珍しくありません。
よほど裕福な家か、日本と同じような価値観を持つアジア系の家庭に生まれれば話は別ですが、大部分の若者は親の援助を受けずにアルバイトと学業を両立させながら自活しています。アルバイトに関してもお小遣い稼ぎという感覚ではなく、生活がかかっているためかなりシビアな姿勢で職探しをします。
アメリカ人の親御さんは、子供の授業料を負担する経済力があっても、日本に比べると経済的な援助の手を差し伸べることは少ないようです。高校まではともかく、大学の授業料は自分で何とかしなさいという方針の家庭が多いと思います。
「金を出さない代わりに口も出さない」アメリカの親子関係
日本では、何か問題が起きた時に親に相談すると、親が子どもの問題を自分ごとのように捉えて自ら解決に乗り出してきたり、子供の問題を肩代わりしようとしたり、お金を出そうとしたり、心配しすぎて体を壊してしまったりするほど、親と子どもの距離が近い気がします。そうなってしまう親を懸念して、問題があっても親には相談をしない子どももいるのではないでしょうか。
そんな日本からアメリカに渡米した当初は、「高校を卒業したら自分で道を切り開け」という多くのアメリカ人の親の在り方を薄情だと感じたこともありました。日本と比べると子どものことに深入りすることが少ないため、親子の関係性が他人行儀で物足りないと感じたこともありました。
ですがアメリカでしばらく暮らしているうちに、そのようなドライな関係が「気持ちの良い距離感」に感じられるようになってきました。
アメリカでは、親たちの多くは「金を出さない代わりに口も出さない」「本人に責任を取らせて学ばせる」という方針なので、その分、日本と比べると冷静に話し合いができる場合もあります。大人になると、「問題を解決してくれなくてもいいから、人生の先輩にただ話を聞いてもらいたい」と思うこともありますが、適度な距離がある関係の方が気楽に相談できることもありますし、大人になったら自分の問題は自分で解決しなければ意味がないという意識も生まれやすいように思います。
背景の違い? 子どもは誰のものなのか
アメリカの親子が適度な距離を置いて接することができる背景として、アメリカはキリスト教の精神が土台にあるからではないかと思います。キリスト教では子どもは神様から養育を任せられた預かりものだと教えているため、日本のように子ども(例えば長男)は「家のもの」という考え方や親の所有物であるかのような意識が希薄です。
「所有物」ではなく、「預かりもの」であるという認識が強いせいか、自分の子どもだからと言って卑下した表現を使うこともなく、基本的には子どもを褒めて育てます。
アメリカでは、血縁に対するこだわりも弱いように思います。養子縁組で結ばれた家族が大勢いますし、血縁ではないことで引け目や劣等感を感じることが日本に比べて少ないのも、「子どもは神様からの預かりもの」という考え方が根本にあるからではないかと思います。
もちろんアメリカは人種のるつぼですから、なかには密着型の親子関係を築いている家庭もあるとは思います。ただ社会全体として見ると、適度な距離感が徹底しているので、子離れができない親やマザコンなどが大きな問題として取り上げられることが少ないのだと思います。
どのような親子関係がベストかはケースバイケースでしょうが、いろいろな親子関係を見ていると、子に対する親の気持ちは世界共通でも、文化によって様々な表現方法や接し方があるのだということを実感させられます。
ランサムはなのワンポイント英語レッスン
Familyという単語が意味する家族
アメリカでは家族(family)を重視し、クリスマスや感謝祭などのホリデーには家族で集まることを大切にしますが、離婚や再婚が多いせいか、新しい家族が増えても、血筋に関係なく皆で仲良くやっていこうとする傾向が強いです。その点から見ると、血筋や伝統を重んじる日本の「家」に基づいた「家族」と、英語の「Family」は概念が異なるように思います。
『写真で見る 看板・標識・ラベル・パッケージの英語表現』ランサムはな著
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