想定外だった、アメリカ日本人社会の真実
日本から移住して最初に住んだのは某南部の小さな都市でした。その土地には日本企業の工場があって、日本人コミュニティーもあると聞き、夫も私も「日本人の友達もすぐに探せそうだね」と喜んでいました。
しかし、そんな夢は移住後にすぐに打ち砕かれます。理由は日本とアメリカの「日本人社会」は全く違うということを知らなかったからです。想定外だったアメリカ日本人社会。これから渡米を予定している方に、私の経験を参考にしてもらえると嬉しいです。
日本人駐在人妻たちの独特な社会
最初にお断りしたいのですが、これは私の個人的な経験なので、こうしたことがアメリカ全土でいつも起こるとは思いません。すべての人が同じ経験をしているとも思わないし、なかには素敵な人たちもいます。とはいえ、アメリカ国内で3回引っ越し、今の土地に落ち着くまでどこでも似たような問題が起こりました。ここでお伝えしたいのは、あくまで「傾向」ですので、それを踏まえて読んで頂きたいと思います。
最初に住んだ場所は、先ほど書いたように日本企業の工場がありました。そのため、駐在員たちが多く住んでいて、当然ながら日本人妻たちもたくさんいました。夫はその企業の社員ではなかったのですが、内部に入っている技術会社からの派遣で、その工場に配属されたのです。その工場に関係する日本人女性の中で、アメリカ人と結婚しているのは、私と現地採用で工場の管理秘書をしていた女性スタッフのAさんだけ。夫の歓迎会には複数の女性(誰かの妻)も来てくれたので彼女たちと顔見知りになることが出来ました。
「アメリカ移住後の心細い中、私はなんてラッキーなんだろう」と思っていたのですが、心の拠り所と期待していた日本人妻コミュニティの中で、すぐに生きずらさを感じるようになりました。理由は「夫の会社での役職が、妻たちのステイタスに反映される」からです。
私はいわば部外者なので、直接嫌な経験をしたわけではありませんが、月に2回ある妻たちのランチ会にいくと、みんな何事もなかったようにニコニコしているのに、個人的に会うとほとんどの人が誰かの文句や悪口を言い合っていました。その文句は「あの人、部長の奥さんだからって人を見下している」とか、「課長の妻の分際で生意気」とか、そんな感じのことばかりでした。
日本人社会の「あるある」
「なんだか不思議だぁ」と思い、「仲良くしたくないなら、どうしてつるむんだろう?」とアメリカと結婚している唯一の女性Aさんに漏らしたところ、彼女からは意外な言葉が出てきました。
アメリカの日本人駐在社会って、結構みんなそんな感じよ。
たとえば米軍の妻たちも、なぜか日本人だけが「夫のランク=自分の価値」みたいな態度になるのよね。日本人の価値観って「社会が決めてくれた肩書基準」になりがち。しかも、ここの妻たちはアメリカに馴染む必要もないから、3ケ月に1回みんなでNYにある日本人経営の美容院にいくとか、車の運転も免許取っている部下妻を足にするとか結構すごいよ。だから、仲良くしすぎるのは気を付けたほうがいい。その輪から外れるのも大変だから。
ちょっとショックでした。日本語ができるサービスしか使いたくないからNYにみんなで一緒に行くとか、断ると嫌味を言われるとか、車の運転も部下の妻を足にするとか。あり得ないと思いましたが、彼女が言うにはこうしたことは日本人社会の「あるある」とのことでした。
幸い夫がすぐに異動になったために、私がそこで過ごしたのは1年だけでした。けれども、すでに気づいた時にはその輪から抜け出せなくなっていた私は、最初の子供の妊娠中、つわりで辛い時期でもしょっちゅう「お茶会」と呼ばれる悪口井戸端会議に呼び出されて辛かったです。
次の土地では、そこまで露骨ではなかったものの、やはり似たような日本社会の「つるみ体質」の弊害がありました。そこではその土地のドンのような日本食レストランオーナーの女性がいて、すべてのその人次第で物事が動いていました。みんな彼女の悪口を言っているのに、街唯一の日本食レストランという理由で、彼女の店にいくのです。そして食事が終わった後に別の店に移ると、そこで悪口が出る……。
ある時、その日本人レストランオーナーの女性が、ネットワークビジネスを始めました。某サプリ会社の新製品で、「それを買わないなんてあり得ない」という勢いで勧めてきたんです。周囲は渋々それに従い購入を決めたのですが、私は断りました。すると、彼女の悪口を言っていた人や、サプリのことで文句を言っていた人まで私を責めるようになったんです。これが日本人社会の「あるある」なのか……。私がプチ鬱になってしまう引き金となった出来事でした。
日本人社会を頼りにしないことの大切さ
そもそも私の間違いは「アメリカ現地の日本人社会を頼ろう」としたことだと思います。同じ日本人同士、言葉のストレスもなく、日本語で話せる友達は誰だって欲しいと思いますが、こうした経験は私に「アメリカで生きる以上、日本人社会を頼りにしない強さが必要」という大切な気づきを与えてくれました。
すべての日本人が私のような経験をするとは思わないし、私には現地で知り合った素敵な日本人女性の友達も何人かいます。けれど、「つるむ日本人の輪」に入ろうとすると、嫌なことを受けいれなければならなかったり、悪口で花を咲かせる人がいたりすることは少なくないので、みなさんがアメリカ移住を考えるのであれば、日本人社会の中だけに自分の居場所を探さないで欲しいと思います。
日本に住んでいれば周囲は日本人しかいないので、友達を選ぶ幅が違ってきます。アメリカにある日本人社会は小規模なので、その中で何かしようとしたら、そこに出来上がったルールとか、リーダー格の人の考えに従わねばならないなど面倒なことになる可能性は否めません。多くの在米日本人女性が、この「あるある」の話をするので、ありがちな話であることは間違いないですから、これから移住を考えている方はこの点によく気を付けてくださいね。