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こんな勘違いは、しないほうが得策!
前回は、アメリカの日本人社会が、いかに日本とは違うかについて書きました。
日本に住んで日本人同士で交流するよりも、ずっとややこしくて、面倒な部分が多いアメリカの日本人社会。私の個人的見解に過ぎない部分はあると思うのですが、日本の感覚のままアメリカで暮らしていくのは無理だと私は思います。
今回は日本人社会でときどき出会う、「勘違いをしている人」についてお話します。そんな人たちは、アメリカに関する特定の思い込みがあって、これから書く「3つの勘違い」をしていることが多いのです。アメリカに来てこうした勘違いをしないためにも参考にしてください。
勘違い1:アメリカ人は自己主張するという思い込み
勘違いその1は、「アメリカ人は自己主張する」というステレオ・タイプな思い込みをしている人です。アメリカでは自分の意見を自分の言葉でハッキリと伝えることを求められることが多いですが、それを自己主張と捉えている人が結構います。意見をいうことと自己主張は全く違います。
自分の意見を言葉にしても、多くのアメリカ人は周囲を気遣い、その場に相応しい発言をする場合がほとんどです。挑戦的に自分の言いたいことを一方的に発言することは歓迎されません。しかし「アメリカでは自分の主張をしないとバカと思われる」ということを間違えて捉えて、ワガママに攻撃的に自分の意見を言ってしまう人も少なくありません。
例えばこんなことがありました。何人かで食事にいくことになったのですが、そのうちの一人のアメリカ人がベジタリアンだったので、野菜料理がある店を選ぶことにしました。すると、ひとりの日本人が「サラダだったらどこでもあるんだから、それを条件にお店を選ばなくてもいいでしょ?」と言ったのです。「せっかく久しぶりの外食で楽しみにしていたステーキハウスでお肉を食べられないのはつまらないわ」と。
ベジタリアンの友人は「私のために気遣いしてもらうのは申し訳ないので、どこでもいいです」と折れ、ステーキハウスに行くことになったのですが、文句を言った人以外は「ステーキハウスがいい」とは言っていなかったため、ちょっと嫌な空気が流れました。その場は丸く収まったのですが、店に行く時にその彼女がこう言ったのです。
「あの子、野菜料理の店しか選べないみたいな雰囲気作ってワガママよね。あのままだと野菜の店に行く羽目になってたわ。アメリカ流に自己主張してよかった」
これを横で聞いていたアメリカ人の女性はその時は黙っていましたが、後で私に「日本人はアメリカ人はみんなワガママと思っているのかしら? 野菜しか食べられない人はわがままで、ステーキハウスに行くことを強引に決める人はワガママではないのね」と笑っていました。自己主張とワガママを同じだと思っている典型的な例ですよね。
勘違い2:アメリカ人は「ごめんなさい」と言わない
これもよくある勘違いです。アメリカでは「I am sorry」と言ったら負けというように聞いていて、何があっても「ごめんなさい」の一言を言わない日本人がたまにいますが、アメリカでも「ごめんなさい」や「ありがとう」をきちんと言葉に出来ない人は嫌われます。
「I am sorry」は単体で連呼すれば自分の非を全面的に認めることに繋がり、場合によっては危険ですが、自分に非がない場合でも「あなたがそういう誤解をしてしまった部分は申し訳ない」とか「あなたの思うように協力できなかったことは申し訳なかった」など、相手に寄り添う際に出る「ごめんなさい」は使います。
何か不都合なことが生じた場合に、大人な対応をするのは最低限のマナーですが、絶対自分が正しいことを前提にしてしまう日本人をときどき見かけます。何か問題が起こる時というのは、どちらか一方が100%悪いなんてことはないはず。だからこそ、起こった出来事の非を認める認めないは別として、起こっていることを解決するための寄り添いは、とても重要だと思います。
何度か日本人に「どうして謝らないのか?」と質問したことがありますが、理由を聞くと大抵かえってくるのは「だって、アメリカではゴメンは禁句でしょう?」。それは間違いなので正した方がいいと思います。
勘違い3:日本は世界から尊敬されていると思っている
日本の文化は世界から尊敬されていて、素晴らしいと思われていることを前提にするとドン引きされることもあります。日本のテレビでは「世界から尊敬される素晴らしい日本」というような番組が多いですが、アメリカ人のほとんどは、日本と中国、韓国の違いが分からないと思った方がいいと思います。
たとえば日本人のうちどのくらいの人が、ハンガリーとチェコ、オーストリアの違いが分かるでしょうか? もしくは、テキサス州とアラバマ州の違いが分かるでしょうか? それとまったく同じです。
確かに車や家電などの日本製品を評価する人は多いでしょうし、日本好きのアメリカ人の中には私たち以上に日本のことに詳しい人も大勢います。しかしそれはマジョリティではありません。
日本好きなアメリカ人に輪島漆のお箸をプレゼントしたら、「これ、ダイソーで購入したのにそっくり!」と言われて「なんて無知な人なんだろう」とガッカリしたことがあります。アメリカにあるダイソーのお箸は一脚3ドル。輪島塗は2脚で1万円。けれど、その価値を知らない人にとっては、ダイソーも輪島塗も、差は分からないのです。だから、憤慨したり落胆したりするよりも、文化的に価値があることを説明してあげたら大抵の人は喜んでその説明を聞いてくれるでしょう。なんなら、もっと日本を知ろうとしてくれるはずです。
ニューヨークとかロサンゼルスとか、日本人が特別多いような都市では日本の素晴らしい文化もある程度知っている人はいると思うのですが、地方都市では同じようにはいきません。「素晴らしい日本」を理解しない人のことを「田舎者」とか「無知」と見下すような日本人を見ることがありますが、失礼なのでやめた方がいいと思います。自分だって他の国の文化をよく知らないのですから。
ちょっと日本人には耳が痛いことも書きましたが、アメリカで生活する上では知っていたほうがいいので、参考にしていただければと思います。