たかが車、されど車

アメリカ生活は、車なしには始まらない

 こんにちは、坂東汰美です。世界的にはエコ、省エネとうたわれていますが、公共交通機関が発達していないアメリカは今も車社会。今回は私の大昔の体験を交えながら、そんなアメリカにおける車の重要さなどお伝えします。

 その昔、学生としてアメリカにやって来た当初、「シカに注意!」という看板があちこちにある、ど、がつくほどの田舎に住んでいました。学校までの距離は車で片道約1時間。都会に住み、学校や仕事場、スーパーマーケットにも近く、大抵のものが徒歩圏内で手に入るような場所に住むのなら車がなくても生活できるかもしれませんが、私の留学先は田舎でした。必然的に運転免許を取得して車を購入し、高速道路を通学路とする生活が始まったのですが、そんなアメリカの事情がわからない両親は、「なぜバス通学をしないのか?」と車購入に関しては消極的で、車の必要性を理解してくれるまで、しばらく時間がかかりました。「アメリカには電車どころかバスも走っていない地域がたくさんある」なんて、日本に伝わっているアメリカのイメージからすると想像がつきにくいのは当然かもしれません。

高速道路を走行中、車が動かなくなった

 渡米したばかりの頃はガソリン代がものすごく安く、私が住んでいた地域では高速道路の料金所もなかったため、嬉しくて嬉しくて、寝る時間以外はずっと運転していたと言っても過言ではないほどでした。

 学生時代ですから、「車を買いました!」とはいっても安いおんぼろ中古車です。エンジンオイルがすぐなくなったり、エンジンがオーバーヒートしたり。そこで友人からオイルチェックの仕方を教えてもらい、足りなくなった時はオイルを足しながら走るようにしました。オーバーヒート時は「この線までなら走れる」という謎のルールを自分に言い聞かせながら、だましだまし運転したりと、「果たして今日は目的地に辿り着けるのか?」というようなスリリングな毎日を送っていました(笑)。

 ところがある日、高速道路でトラブルが発生しました。いつもと違うバキッという音がしたなーと思ったら、アクセルを踏んでもうんともすんともいわなくなったのです。怖くなったのでウインカーを出して路肩に停車しました。当時は携帯電話もありませんでした。「高速道路で下車して、電話を探して歩いていた人が事故に巻き込まれた」なんて話をよく聞いていた時代でしたから、あらゆる行動を起こすことは諦めてそのままハザードランプを点けて「たまたま通りかかるパトカー」を待つことにしました。

 パトカーを待つこと2時間、もちろんトイレも我慢です。2時間の間、実は何台ものパトカーが路肩でハザードを出している私を無視して走り去って行きました。「もっと治安のいい地域だったら、対応が違うのかな」、「私のボロ車のせいかな」などと考えながら、非情にも置いて行かれたような、なんとも言えないさみしさを覚えたことは今でも忘れられません。

 ようやくパトカーが現れて停まってくれましたが、警官が天使に見えたのもつかの間、「こんなところで何やってるんだ!危ないだろ!」と怒られる始末……。エンジンはかかるけど車が動かないことを説明し、レッカー車を呼んでもらうことができました。レッカー車のおじいちゃんの作業をみていると、おじいちゃんが一言「こりゃ~動くわけないなぁ、アクセル折れてるよ」。修理工場へ向かうために同乗したレッカー車の中で、「アクセルって折れるものなのか……。中古車は怖いなあ」と痛感しました。このアクセル破損事件は、私が数年後に新車を購入するに至った理由のひとつになりました。

運転時のトラブル対処法は?

 車の走行中にもし私が体験したようなことが起きてしまったら、車のコントロールを確保するためにハンドルから手は離さず、速やかに路肩へよけて停車することが大切です。今は携帯電話があるので、然るべきところへすぐ連絡できますし、よほど古い車でない限り、サポートセンターと連絡もとれるのである程度は安全です。暗くなってからのトラブル発生時には、街灯の下に停車するなど、同乗者がいても必ず明るいところに停めましょう。

 それから、車の年代を問わず、常日頃から車の状態に気を付ける癖をつけるといいかもしれません。私はおんぼろ中古車の運転歴が長いので、特に音に気をつけています。普段と何か音が違うなと思ったら、どのような状況の時に違う音がするか、その音の種類や長さなどを覚えておくと整備士への説明に役立ちますよ。また、道の高低差もそれほどないのにいつもより揺れが大きいなとか、ガタガタするような気がする、というのも注意です。ただ、揺れやガタガタは実際に道の状態が悪いことも多いので、音に気を付けるほうがいいかもしれません(笑)。

車はメインテナンスが鍵

 アメリカには、日本のように定期的な車検というシステムがありません。日頃から車のメインテナンスに関しては、すべて自己責任です。新車でも中古車でもそれなりのメインテナンスが必要ですから、ディーラーと仲良くしておくとか、修理工場を決めておくといいかもしれません。整備士の友人や知人がいると車の知識もついてとても心強く生活できますよ。

 私は車の修理が必要になると、すぐに飛びつかず、「例えばあとどのくらい、このままで走れるの?」と具体的な走行距離を聞くようにしています。おおごとではない修理のときは「雨がふるまで」、「冬になるまで」など目安になるのかならないのか、一応の気休めのような意見をもらいます。とはいえ大抵は怖いから、すぐ修理するようにしますが。

 ディーラーや修理工場に車をメインテナンスに出すと、特に重要でないサービスも見積もりにポンポン追加されることがあります。そんなときは焦らずに、「今回はオイル交換をしたいだけ」とか「そのサービスは次回にする」など意思をはっきり伝えましょう。本当に危ない状況で修理しないといけない場合は、相手も車を離してくれないので、それが目安になりますよ(笑)。

 何はともあれ、ニューヨークのように公共交通機関が発達している特別な地域以外のアメリカ生活では、車は必要不可欠です。移動手段がなくなると生活ができなくなってしまうので、車のメンテナンスは忘れないようにしましょうね。これって普段からのお手入れが大切な靴と一緒かな、と思う今日この頃です。

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