毎回のように「財布を忘れたという」男
こんにちは。離婚から少しずつ立ち直りつつある、凛子です。私の元夫のダメ夫っぷりのおさらいは、こちらです。
さて、結婚前に一緒に住むことになったアパートの頭金$1000(当時約11万円)が支払えなかった元夫トム(仮名)ですが、その後も金銭にまつわる彼の危うさは日に日にパワーを増していきました。
毎月のアパートの家賃や光熱費は半額ずつ支払う約束も、3カ月を過ぎた頃から「今ちょっと手持ちがないから、あとで払うね。とりあえず出しといて」と、言われることが毎月繰り返されるように。
家賃や光熱費の他にも、たとえば……
1)日々の食料品の買い物に彼は行かない。私がひとりで行くから、必然的に私が支払う。
2)トイレットペーパーや洗剤などの生活雑貨も彼は買いに行かない。私が買わなければ、トイレットペーパーは補充されないので必然的に私が支払う。
3)一緒に出掛けて駐車場に車を停めても、料金を支払う機械には決して近づかない。
4)友達とかと食事や飲みに行って会計になると必ず「凛子、とりあえず出しといて、あとで渡すから」と言う。なんど「財布を忘れてきた」かは、もはや数え切れない。
5)スポーツ観戦、コンサート、BBQなどイベントが大好きで、友達と予定をどんどん決めるくせに、チケット購入や材料の手配をしない。でもイベント参加をキャンセルしないため、仕方なく私が支払って約束に間に合わせる。
という感じで、トムはお金を払わない……という行動パターンが定着していきました。恐ろしいことに、それが私たち二人の生活において当たり前になっていったのです(怖)。
借金ノートを作ってみたけれど……
元夫トムの金払いの悪さに対する不安は、一緒に暮らし始めてから、かなり早い段階で「無視できない」という次元に到達しました。
「これは、何とかしないと大変なことになるぞ……」
そう思った私は、家計簿のような間仕切りがある黒いノートに「彼に貸した金額」を細かく記入しようと思い立ちました。まるで時代劇に出てくる金貸し屋の十三郎のように(誰?)、スーパーのレシート1枚も漏らさずに事細かく記載しよう、こういうことは流してはいけないと決心したのです。
そして、「ねえ凛子、とりあえず、ここ出して……」という言葉がトムから出た瞬間に、「ちょっと待ったー!」と叫んで、おもむろにその黒いノートを見せる作戦に出ることにしました。今振り返ると、そんなノートなんて何の効力もなく、何の役にも立たない代物だったわけですが(失笑)。
もちろん、借金の詳細が記載されたノートを見せられる度にトムは、とても傷ついた表情を見せます。それまでの累計金額を見て、「こんなに出してもらっていたなんて全然気づかなかったよ。迷惑かけてごめんね、次のペイチェック(給料)ですぐ返すからね」と反省した様子も……。
でも、反省してみせても、問題はその「次のペイチェック」が「いつ来るのか?」なんです。
自営業といえば耳障りがいいけれど、トムは会社登記もしていないフリーランスのグラフィック・デザイナーだったので、収入にばらつきがある。自分が働かなければ収入に繋がらないので、必死で営業して仕事をとっていかないと収入、つまり「次のペイチェック」は一向に来ないわけです(怖)。
さらに恐ろしいことに、トムは働き者ではなかったという付録つきなのですが、これについては凄すぎて一言では済まないので、追い追い解説させてください(笑)。
彼の常套手段に慣れていく
さて、そんな状況下で作られた借金ノートでしたが、そのノートの累計を見て、トムがガーンと落ち込んだ様子を見せるのは束の間のこと。素早く話を変えてしまう強引さも併せ持った男でした。
日々の食事は毎日私が作っていたけれど(だから食材も私が買っていたわけで)、ちょっと都合が悪くなると、「あ、今日は僕がごはん作るよ! 美味しいものを食べながらワイン飲もう」などと一方的に提案し、弾んだ足取りでキッチンに行って、鼻歌を歌いながら料理を作り始める……なんてことや、「はい、これ。きれいだったから」などと突然、小さな花束を買ってきて私の機嫌をとるのは、彼の常套手段でした。
小さな花束(小さいということも力説したい)だけでなく、過去にレストランの厨房で働いていたこともある彼の料理はそれなりに凝っていてなかなか美味しいので、「こんなダメ男だけれど、いいところもあるんだよな」と、人に勘違いをさせるには十分な効力を発揮します。しかも、彼がその技を使うタミングがいつも絶妙でした。
彼のこの特技を目にするたびに、「この人は、こういうワザをうまく使って、人生のピンチを切り抜けてきたんだろうな」と、なんだか感心してしまい、「まあ、いっか。お金もそのうち返してくれるだろう。こんなことくらいでイラっとするなんて悪かったなあ」と私の方が反省してしまう、ということが私たち夫婦の中でパターン化していったのです(怖)。
この頃は結婚前だったので、まだ引き返す余地は十分あったのに、私はそうしなかった。それは動かせない事実です。もし、あの頃、未来がみえるクリスタルボールがあったら、その後どんな結婚生活が待っていたかが見えて正気に戻れたかもしれないけれど、クリスタルボールはなかったし、預言者も新宿の母もそばにいなかったので、そのままズルズルと生活を続けてしまったのでした。
次回は、ますます沼にはまっていった話。みなさま、くれぐれもダメ男には気をつけて、よい1日を送ってください(笑)。