なごみ創作家まっちゃん スペシャル・インタビュー

まっちゃん母娘の「本日も晴天なり」、早くも書籍化!

 本誌で好評連載中の『まっちゃん母娘の「本日も晴天なり」』が早くも書籍化され、12月18日から全国の書店で販売が開始されます!4コマ漫画とエッセイ全編を書き下ろした新作が生まれた背景や同書への想いについて、著者のまっちゃんにお話を伺いました。

母との暮らしを描きとめておきたい

──重版9刷という快挙を果たしたデビュー本『尼寺のおてつだいさん』から約3年半振りの新作本の出版、おめでとうございます!

 ありがとうございます。このような機会をいただけて、とても嬉しいです。なんだか恐縮です(汗)。

──この『まっちゃん母娘の「本日も晴天なり」』は弊誌で毎月好評連載中のコミックエッセイで、まっちゃんとお母様の二人暮らしの日々を4コマ漫画で綴っています。笑えるお話が満載ですが、ご自身の生活の中で起きたことをリアルに描いていらっしゃるのですよね?

 はい、そうです。お恥ずかしいくらいリアルな部分もあるので、たまに「こんなに何てことない様子を描いていいのか?」と思うこともあります(笑)。でも気取っても仕方がないよなぁって思って結局、描いちゃってますね。

──なぜ、この作品を描こうと思ったのですか?

 ひとことで言うなら、母との生活を記録しておきたいと思ったことがきっかけです。

──なにか、そう思うきっかけになる出来事があったのですか?

 前の本(『尼寺のおてつだいさん』)の中でも少し書きましたが、7年暮らしたお寺を下りて、実家で暮らし始めてから自分の生活環境がすごく変わったんです。高齢になってきた両親のそばにいたくて実家に戻ったのですが、当初は両親の生活のペースに馴染むことや、自分ができることを探しながら暮らすことでバタバタでした。

 そして、新しい生活がようやく落ち着いた頃に父が他界したんです。それは私にとってとても大きなことでした。それで、しばらくかなり落ち込んでいたんですが、ある時ふと、母ともっと支え合っていかないとってことに気づいたんです。

 母は大人しい性格であまり感情を出す人ではないので、どれほど辛いのかはわかりにくいのですが、悲しいにきまっているし、大好きだった父が亡くなったあとも母の生活は続いていきます。だから私がもうちょっとしっかりして、笑って過ごそう、母と二人で暮らす時間をもっと大切にせんとバチが当たるわって。

 その頃から少しずつ、日常でクスッとしたことや覚えておきたい母のレシピなんかを描きとめるようになりました、子どもの絵日記みたいに。

作品を通して伝えたいこと

──なるほど、そうやって描きとめたことが、この作品に繋がったのですね。

 はい、だから一大決心をして新作を描き始めたわけではなくて、自然発生的に描き始めました。ただ、母にもっと優しくしようとか、母との同居をもっと楽しもうと思うようになったのは、父が亡くなったことが大きいと思います。父の晩年にそばにいられて良かったと思っていることも、今の母との二人暮らしに繋がっています。

―日々の生活にそれまでとは少し違う価値観が生まれた、ということですか?

 そうですね、そうだと思います。いつか、いつかと思って後回しにしていると、時間がなくなってしまうかも知れないじゃないですか。だから以前なら気にもとめなかったこと、たとえば母が作る魚の煮付けの作り方なんかを「ちゃんと覚えたい」と思うようになったり、いつか聞いてみようと思っていた母の若い頃の話を聞いたりするようになりました。

 最近はお願いして母に料理を教えてもらったり、一緒におかずを作ったりもするんですよ。なーんて言っても、たまにですけど(笑)。

―どんな時に「あ、このことを描いておこう」と思うのですか?

 うーん、どうかなー、母が何かおもしろいことを言ったときが多いですかね。笑わそうとして言ったことではなく、何気なく言ったことがツボったときとか、絶妙に美味しいものを一緒に食べたときとか。

 それとは逆に、母は何も言わないけれども、私が気づいて「このことを描こう」と思うこともありますね。たとえば母が「歳を取ったなぁ」と感じる出来事があったときとか、これまでとは違う仕草や表情を見たときとか。心がキュッとした時って言うんですかね。でも私はそういう微妙な感じを言葉ではなかなか上手に表現できないので、絵で描きとめています。

―新刊の中に「一緒に歩くと」というセリフのない漫画がありますよね。二人が並んで歩いていて、まっちゃんがふと気づいたらお母ちゃんとの距離が開いている。お母ちゃんの歩調が遅くなったことに気づいた時のどこかせつない気持ちが伝わって、ウルっとしてしまいました。

 えっ、ホントに? 共感していただけて、すごく嬉しいです。私はああいうときの気持ちを文章でうまく表現できないので、セリフなしの漫画にしたんです。

―親が年をとっていることはわかっていても、日常のふとしたところでそれを目の当たりにして「はっ」とする瞬間って結構ありますよね。

 あります、あります。自分も親も毎年ひとつずつ年を取っていることは分かっているのに、何なんでしょうね、あの「はっ」っていうのは(笑)。でも、同じように感じている人がこの漫画を読んで「そうそう!」「あー、あるある!」と笑ったり、和んだり、ほっと安心できたらといいなと思っています。

いろんな暮らし方がある中で

―この本を作る際にこだわった箇所はどんな部分ですか?

 すべての漫画やイラストが手描きってことですかね。前作の『尼寺のおてつだいさん』もそうでしたが、今回もすべてひとつずつ紙に手描きしています。

 今はデジタルで描くのが一般的ですが、なんだかしっくり来ないというか、やっぱり手で描きたくて。デジタルよりも作業工程が増えるので何倍も手間が掛かるし、直しが出てしまったら最初から描き直しになるので本当に面倒なんですが、それでもこのスタイルでやりたかったんです。出版社さんにも「今回も手描きにしたいんです」と言ったら、「えーっ!?」と驚かれました。もしかしたら驚いたんじゃなくて、引いていたのかも(苦笑)。

―この作品はどんな方に、どんな風に読んで頂きたいですか?

 私と同じような生活を送っていらっしゃる方や、ご自身のお母さんのことを気にされている方、ご自身がお母さんでもある方など、いろんな方に読んでもらえたら嬉しいです。

 どんな風に? うーん、いろんな暮らし方があるんだなぁって、楽しみながら読んでもらえたらいいですね。

 暮らしの絵を描こうとすると、たいてい両親と子どもたちの4人家族という構図になりがちですが、世の中には独身だったり、伴侶を失っていたり、子どもが巣立って夫婦だけだったり、子どもはいない夫婦だったり、シングルマザーだったり、とにかくいろんな状況の人たちがいて、いろんな暮らし方がありますよね。

 うちの場合は、長年の伴侶を失った母と独身の私が関西のわりと田舎にある小さな家に住んでいますが、大都会のキラキラしたタワマン暮らしの人から見たら、別の惑星の話くらい違う生活だと思います。でも私は「よそはよそ、うちはうち」みたいに、みんながそれぞれ楽しく暮らせばいいと思うんです。

 特になんてことない日でも、たとえば柿を切ったらすごく甘かったとか、信号が青ばかり続いたとか、ちょっとした楽しいことや嬉しいことがあったりするじゃないですか。そういう小さな幸せを慈しんで、「あー、今日もいい1日だったなあ」と思ってグーグー眠れたら最高だよね、なんて思いながら描いた本なので、みなさんにも気楽に読んでいただけたら嬉しいです。

―最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。

 いつも『Go Women Go』で『まっちゃん母娘の「本日も晴天なり」』連載を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。まだ読んだことのない皆様も、ぜひ一度読んでみてください。この新刊では、私たち母娘の日々の生活を四季の移り変わりにのせて全作品を書き下ろしました。これを読んで「あ、我が家と同じだ」と笑ったり、疲れた気分が少しでも和んだり、ご自身の家族を思い出して楽しんでいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

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まっちゃん母娘の『本日も晴天なり』書影



尼寺からの旅立ち、創作家の道へ(まっちゃんインタビュー前編)

尼寺からの旅立ち、創作家の道へ(まっちゃんインタビュー後編)

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