話題の一冊!「大人が新しいことを学ぶコツ」(前編)

地頭がよくなるって、ホント?

 2021年に発売され話題を呼んだ地頭が劇的に良くなるスタンフォード式超ノート術。著者、柏野尊徳(かしの たかのり)さんは、「地頭は年齢に関係なく良くなるんです」と話します。

 社会に出たり、家庭に入って子育てするために学びから離れることが多い女性にとって、これは朗報です。「学び直しをしたい大人」は何をどう勉強すれば、素敵に年を重ねられるのでしょうか? 柏野さんに地頭が良くなるコツや、学び直しのコツをお聞きしました。

大人たちは、何をどこから学び始めたら良いのか?

編集部:柏野さんの運営する「アイリーニ・マネジメント・スクール」は、世界中のあらゆる場所で、誰もが自由に研究や学習に集中できる社会づくりを掲げています。そんな世の中はとても理想的ですが、アラフィフ周辺の女性たちが何か学び直すのは、なかなか大変な気がするのですが……。

 確かに「学び」を何か特別なことのように構えて考えてしまう場合、ハードルが高いと感じるかもしれません。でも、あまり難しく考えなければ、様々なところに「学び」の機会は溢れていると思います。

 例えば、学ぶきっかけは、日常的にインターネットの検索をすることの中からでも見つけることが出来ますよね。皆さんも何か気になることがあったら、それを検索してみたり、検索して出てきた記事を読んだりするでしょうが、そこから一歩踏み込んで本を読むだけでも「学び直しの行為」と言えると思うんです。本を読むことって、誰もが始めやすい学びだと思うんですよ。

 しかも今は、楽しみながら知識を増やせる本もたくさんあります。例えば歴史やハウツー系の知識などを、面白くマンガで紹介するような本もたくさん出ていますよね? そうした「とっつきやすいところ」からスタートしても良いと思います。図書館にいけば、いくらでも本は借りれますから、お財布的にも負担は少ないですし。

 もっと学びたい、一歩踏み込んで知識を深めたいと思うようになったら、そこからだんだんハードルを上げていけばいい。知的好奇心が出てきたら、カルチャーセンターや市民講座などに行くのも良いと思いますよ。

編集部:学びから遠ざかって、学び方が分からない人が多い一方で、「資格マニア」的に多くの知識を詰め込むものの、実生活で何も行かせていない人もいますよね? 

 学ぶことに特定の目的を持って、アウトプットをしていくことは大事です。私は「知的好奇心」を満たすための学びも、とても良いことだと思っています。

 もし、せっかく学んだことをアウトプットしたいなら、簡単なことから始めたらどうでしょう? 例えば、学んだ知識は仕事や実生活に活用することも出来ますが、それを「周囲と共有する」ならば、もっとハードルが低くなります。自分のブログやソーシャルメディアを使って、その知識をシェアすることも立派なアウトプットです。学んだことを上手に活用する方法は意外といろいろあると思いますよ。

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なぜ「ノート術」をマスターすると、地頭が良くなるのか?

編集部:柏野さんの近著『地頭が劇的に良くなるスタンフォード式超ノート術』は、ノートを活用することを題材の中心にされています。地頭トレーニングに、なぜノートの活用の仕方を勧めているんですか?

 いろんな学びを実践して、それを整理するノートの使い方というのは、すでに本になっているんですが、私が紹介しているノート術は「これから何かを学ぼう」とする人の後押しをする内容になっています。いわば「適切な学び方」の手助けになる方法を紹介したいと思ったんです。なので、同書の中では学んだことの「アウトプットのさせ方」に、こだわりました。

 インプットだけだと「話を聞いておしまい」「ネット記事を読んでおしまい」「本を読んでおしまい」ということが多いと思うんです。そういう知識の詰め方をしてしまうと、例えば本を読んだ後に誰かから「その本を読んで、どう思った?」と聞かれても、情報が整理されていない状態なので質問に対する答えがすんなり出ず、「よかったよ」の一言で終わってしまったりする。

 ですが情報を得た時に、「インプットすると同時にアウトプットもする」ことを意識すると、後からそれが活かせる場所が増えると思うんですよ。ノート術っていうのは、つまり「アウトプット」の入口でもあるんです。

編集部:ここで言う「アウトプット」とは、具体的にどんなものですか?

 例えば全く片づけられていない部屋を思い浮かべて欲しいのですが、そのメチャクチャな状態を皆さんだったらどうやって「効率よく」整理しますか?

 ただ漠然と目の前のことを片づけるという選択肢もありますが、予め「ここにはXXXを収納しよう」と決めておいて、それに従って収納していけば整理が楽になるはずですよね? ノート術はそれに通じるものがあると思います。つまり、学んだ情報を取捨選択してノートにまとめる際、先にある程度の「フレーム」を決めておくのです。

 一例をあげると、「印象に残った誰かの発言」をノートに書く際にも、それが単純に「いい話だ」と思ったから印象に残ったのか、「良いアイデアがひらめいたから」と思ったから印象に残ったのか、「疑問」を感じたから印象に残ったのかなど、いくつかのフレームに最初から仕分けておくのです。そうすれば、後でそれを見た時に自分がその発言に対し、「印象に残った」と思った理由が見えやすくなります。

 もちろん、自分がその場で思ったことを単に書き留めることも大事でしょうが、ノート一冊を上手に活用するちょっとした工夫で得た知識や情報が「明日役立つもの」に変わるんです。何かに取りかかろう、学ぼうとする時に情報を整理しておくことは、結果的に明日、あるいは未来の仕事が楽になることに繋がると思います。

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柏野尊徳さんのプロフィール

柏野尊徳(かしの たかのり):
慶應大学総合政策学部へ入学、1年目に学内学会で優秀論文賞を受賞。さらに見識を磨くため、スタンフォード留学でデザイン思考を学ぶ。帰国後に飛び級し、授業料全額免除の特待生として慶應修士課程へ進学・修了。現在ケンブリッジ大学でイノベーション・エコシステムを研究、博士号取得予定。在学中に設立した「アイリーニ・マネジメント・スクール」は、マイクロソフトやパナソニックなどの組織変革を支援し、世界40カ国発行『Startup Guide』で日本を代表する教育機関に認定。スタンフォード講師との共同講座、開札教材ダウンロード16万部、開催セミナー累計参加5,000名。著書に地頭が劇的に良くなるスタンフォード式超ノート術

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